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セノーテと聖地

 メキシコの旅は、アステカ・マヤ文明の巨大遺跡をはじめとして、カンクンなどの海辺のリゾート・フィエスタ・西洋文化・土着文化・絵画・モダンデザインなど、ありとあらゆる見所が目白押しで、たったひとつの国とは思えないほどのグランドツアーでした。

メキシコの有名な遺跡群については多くの人が記しているでしょうから改めて書くまでもありませんが、印象的だったのはユカタン半島のマヤ文明遺跡エリア周辺に点在する、ジャングルの中に自然の力でつくられた聖地でした。

自然の力がつくり上げる空間のスケールと感動は、人間のつくるどんな建築や土木構造物でもかないません。人間の営為のちっぽけさを感じる瞬間です。

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すぐそこにある「楽園」

久々のエントリです。近頃考えていることなど。

わたしは建築・造園設計を職業としているので、良い環境をデザインしようと日々四苦八苦しています。
究極の目標としては建築と造園の知恵を集めて人が「楽園」と感じられるような環境をいつかつくれたならば本望であると考えています。

しかし一方、身のまわりの何気ない風景のなかでも至るところで「楽園」は現れたり消えたりしています。奇跡的に美しい環境が。
「楽園」は何も非日常の南の島にばかりあるわけではありません。
都市であるか田舎であるか、南であるか北であるかなど関係なく、「楽園」はそこら中で発見できます。

素敵な場所は世界中にたくさんありますが、日本も実に美しい国です。


写真は、ふと通りがかった街並みにたたずむイチョウの木の、太陽の光を透かした神々しい黄金の輝きと、金色のカーペット。

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ペルージアのすごい道

久々にイタリアに戻ります。ウンブリア州の州都ペルージャの、とある"道"についてです。

職業柄、街を歩いていると建物や広場を中心として気になるものが無限にあります。中でもあまり普通は興味を持って眺めるものではないと思いますが、すごいデザインの"道"や"階段"を発見すると、とても興奮します。ランドスケープデザインでは、道や階段のデザインも重要な要素の一つなのです。

以前に専門書で小さな写真を見て以来気になっていた"道"がイタリアのペルージャにありました。特に一般的に有名な場所でもなく、その本の片隅にあったPerugiaという情報のみを頼りに探してきました。

Perugiaの市街地にたどり着き、地図を隅から隅まで眺めてみると、どうやらそれらしき場所が!


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横浜港大さん橋国際客船ターミナル

歴史モノが続いたので息抜きに現代建築です。
職業柄多くの建築物を見ますが、好きな現代建築、というのはめったにありません。
建築もたくさん見ていくと既視感のある作品が多かったり、単にごたごたと派手な作品などでは全く驚かなくなります。
そのなかでも、横浜に行く度に必ず行ってしまう建築(?)があります。
"横浜港大さん橋国際客船ターミナル"です。
設計はあまり一般には馴染みのない事務所かと思いますが、FOA(Foreign Office Architects)です。

横浜港大さん橋国際客船ターミナルは10年近く前に国際コンペが催され、その最優秀作品が実現したものです。
FOAは当時全くの無名で、この作品が国際的なデビュー作となりました。プランがあまりにも革新的だったので数々の著名建築家を凌いで最優秀案に選ばれたのですが、構造的・予算的に実現が可能なのか疑問視されてもいたため、建築界ではかなりの注目を集めました。

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Villa Hadriana

今回は再びイタリアに戻って、ローマ近郊Tivoliにある"ヴィラ・ハドリアーナ"についてです。
以前のエントリにも登場した"エステ荘"のすぐそばにあり、Tivoliでは2世紀と16世紀の為政者の対照的なヴィラを体験することができます。

"Villa Hadriana"は、その名のとおりローマ皇帝ハドリアヌス帝の別荘です。別荘と言っても都市と言えるほどの壮大な規模のもので、当時のローマの3/4の面積を持っていたとも言われています。"ギリシア劇場"、"海の劇場"、"ギリシア語図書館"、"ホスピタリア"、"宮殿"、"大浴場"などの建築群で、現在のテーマパークのように、地中海・エジプト・ギリシアなど自らが支配した世界各地の縮図を建築的に作り上げたもののようです。

ここはアテネのアクロポリスと並ぶ建築関係者の聖地でもあります。
古くは18世紀に版画家・建築家であるピラネージが銅版画を多数描き、現代でもコルビュジェにはじまり、日本でも磯崎新や安藤忠雄などがインスピレーションの源としました。
この場所ではもはや機能も目的も何も無く、ただただ分厚い壁と石の柱が林立する。これこそが建築の純粋な姿です。

しかし、私がここで感じたのは建築と植物の関わりの理想像であり、ランドスケープデザインの原型のようなものです。
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内村鑑三記念館"石の教会"

「これは建築ではない・・・!」
と感じるすごい建築がごく稀にあります。

どういうことかと言うと、建築家らしい建築ではない、ということです。

建築でなかったら何なのかと言うと、ランドスケープや都市計画、アートなど建築の周辺、もしくは全く別の視点からつくられている「建築」に特に強く感動させられることがあります。

そのような例の一つがこの軽井沢の内村鑑三記念館、通称"石の教会"です。




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テーブルのデザイン

メキシコが続いたので今回はちょっとユルいエントリーで、テーブルについてです。

世の中には様々なデザインの家具があふれています。中でも椅子は歴史を通じて様々なデザインや機能のものが考案されてきました。名作と呼ばれるようなものもたくさんあるのですが、形だけでなくすわり心地も様々で実に楽しいものです。
これまで椅子にについては大変興味を持って相当数の椅子に腰掛けてみたりデザインを楽しんできたのですが、テーブルはまあどれも似たり寄ったりだと思ってあまり興味を持ってはいませんでした。
しかし、テーブルにも奥深いデザインがある、ということに気づかせてくれた家具があります。

イギリスERCOL社の"ROUND DROP LEAF TABLE"というテーブルです。
ドロップリーフという名の通り、両側が折りたたみ式になっています。Lloyd's Antiquesによれば1960年代頃につくられたもののようです。
Margaret HowellがErcol社の同時期に作られた椅子を復刻したりして近年そのデザインが見直されています。イギリスのカントリー調が好きな方々にも人気のようです。

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プリエト・ロペス邸

引き続きルイス・バラガン設計の名作住宅、プリエト・ロペス邸です。

この家は世界遺産には登録されていませんが、個人的には今回訪れることのできたバラガンの住宅の中では一番の傑作ではないかと感じました。
建築作品として見ると、世界遺産となった"バラガン邸"、また晩年の最高傑作とされる"ヒラルディ邸"などの作品のほうが強烈な個性が際立っていて、
いずれも"一人で静かに瞑想する場所"としては最高の場所なのですが、同時にどこか暗く寂しい雰囲気も感じられます。
しかしこのプリエトロペス邸は全体的に"家族の場所"という雰囲気が強く、明るく開放的でのびやかな住宅となっています。
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ルイス・バラガンの家

 さて、ようやくルイス・バラガンです。

ルイス・バラガンはメキシコを代表し、また世界的に高名な20世紀の建築家です。1930〜1970年代にかけて活躍し(と言っても作品は数えるほどしかありませんが)、1980年には建築家としては最高の栄耀、プリッツカー賞も受賞しています。
建築家として最も特異なのは、住宅ばかりを作り続けて世界的な建築家になったこと、また建築とランドスケープの設計を生涯続け、建築家であると同時に造園家・都市計画家でもあったことです。
まずは訪れたいくつかの代表作の中からバラガン邸を取り上げます。
バラガン邸はもちろんルイス・バラガンの自邸と仕事場なのですが、なんとユネスコの世界遺産に登録されています。歴史的建造物や自然遺産など、世界各地に世界遺産は数多くあれど、20世紀につくられた現代建築が世界遺産となった事例はまだ極めて珍しいです。しかも住宅作品では世界でもまだ2,3しか登録されておらず、20世紀の世界的代表作と言える住宅の一つです。
(写真は外部しか撮影が許されていないので、内部の写真は引用です。)
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メキシコの街並みと人々

今回はメキシコで出会った何気ない街並みや人々を紹介します。

メキシコの人々はどうやらほとんどの人がごきげんです。少なくとも表面上は。おそらくは深ーい悩みのある人もいるのでしょうけども、大都市でも田舎でも関わるほとんどの人がにっこりしておそろしくやさしくしてくれます。が、仕事はあまり好きではないようです。
街並みは様々な強烈な色で塗りたくられていながらも独特の調和を持っていますが、人々ののどかさと呼応するように、不思議と力が抜けてゆるく心地よい雰囲気を醸し出しています。

写真はメキシコシティー郊外の公園に面した真っ赤な回廊のカフェでくつろぐ人々。メキシコ庶民の日常の、のどかな光景です。


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フリーダとリベラの家

メキシコ第2弾は、メキシコシティにある画家で夫婦のフリーダ・カーロとディエゴ・リベラの家。

20世紀前半の壁画運動で大作を数多く残したディエゴ・リベラと、その人生とシュールな画風でメキシコで最も有名な画家の一人となった妻フリーダ・カーロ。

奥の青いほうがフリーダ、手前レンガ色のギザギザ屋根がリベラの家で、屋上のブリッジで2つの家はつながれています。
個性的な画家夫婦の家というおもしろさだけではなく、近代建築にしては極めてめずらしいすごくかわいい家なので、とりあげてみたいと思います。


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Hacienda San Jose

10年来の夢、メキシコに行ってきました。
建築界の巨匠ルイス・バラガンの住宅を主に見る目的で行ってきたのですが、毎度のことながら現地にはもっとすごいものが無限にありました。ルイス・バラガンは後回しです。

ユカタン半島の中心都市メリダ郊外の"Hacienda San Jose"アシエンダ・サンホセというホテルに宿泊して数日を過ごしてきたのですが、これがすごい。
楽園のような一つの理想の環境がそこにはありました。

普段建築や造園の設計活動をしていると、何のためにどういうものをつくろうとしているのか見失い、単なるデザインの面白さや流行にとらわれたり、機能性に走りがちです。
けれども、本当に実現すべき最高の住環境のクオリティは、静けさ・あたたかさ・鳥や草木などの自然・水・木や石などの本物の素材、また伝統・文化等、非常に「あたりまえの要素」である、ということが改めて実感させられました。

 
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日本の住宅地から社会を考える

今回は住宅地から日本の社会の一側面を考えてみます。
(東京の住宅地を念頭においていますが、多くの地方都市でも似たような状況が見られます。)

日本の住宅地は単に農道をアスファルトにして土地を切り売りしたものがほとんどです。
家が建て込んで住人が増えてくると、商店ができてきて、今度は学校が必要だ、公民館が必要だ、ということであわてて施設を整備していった、という過程で出来上がった地域がほとんどのように見えます。
ですから宅地化する前の地図を見ると、驚くほど道路の形はそのまま残っているわけです。
農地が切り売りした土地には、その時代ごとにもっとも安価に建てられる方法で思い思いの家が建てられました。
現代に限らず古来都市の発生とはそのようにして発生していったのでしょうから、そのこと自体は自然な成り行きで問題は無いのかもしれません。
要は都市計画というものなしに(もしくはインフラなどの最小限の都市計画で)自然発生的に出来上がった都市である、というのが日本の住宅地の特徴です。

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三千院

"京都大原三千院の紅葉"

今年ももうすぐ紅葉の季節です。
造園家のはしくれとしましては、春と同じくらいに見所の多い楽しみな季節です。

日本には紅葉の名所はたくさんありますが、JRの広告や雑誌などで秋になると毎年のように登場するのでずっと気になっていた京都大原の"三千院"の紅葉。
昨年ようやく訪れる機会がありました。

モミジの紅葉だけが美しい場所、建物が素晴らしい場所、美しい自然環境、それぞれ単独では美しい場所は他にもたくさんあります。
しかし三千院では、「建築」と「庭園」と周囲の「自然」が一体となって、他のどこにもない強烈な"美しさ"をつくり上げています。



 
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AKARI イサム・ノグチ

"照明のチカラ"

この世には、点灯すると空間にオーラを発する照明、というものがあります。
たった一つの照明で、夜に昼間とは異なる独特の"空間"を生じさせることができます。
これは照明器具を所有して、夜に自分の真っ暗な部屋の中で点灯してみないと本当の効果は味わってみることができません。
このようなオーラを最も安価で手軽に体験してみることができるのが、このイサム・ノグチ設計のAKARIという照明シリーズです。
今回紹介するのは「光の彫刻」AKARIシリーズの最も小さいものです。


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国立新美術館

今回は軽いエントリで、東京で好きな場所を取り上げたいと思います。
まずは話題の六本木エリア、国立新美術館です。
設計は黒川紀章・日本設計共同体。

ここには素直に"気持ちの良い"空間があります。
そのためか常に自然に人が集まり、のんびりと時間を過ごしています。
何でも無いことのようですが、気持ちの良い都市空間というのは、特に日本では滅多にあるものではありません。
しかし建築業界では・・・?
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Piazza del Campo

"世界で一番美しい広場! "

イタリア第二弾はシエナのカンポ広場 Piazza del Campo です。
イタリアには星の数ほどの広場がありますが、この広場には世界中見渡しても他のどこにもない特別なオーラがあります。
それゆえか、"世界で最も美しい広場"とも呼ばれています。
草木一本無いのに、すごい広さなのに素晴らしい居心地で、永遠に座っていたくなってしまう場所です。



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Villa d’ Este

学生時代に建築と都市計画を学び始めて10数年。
これまで日本・海外の様々な場所を訪れてきました。
ものすごく感動する場所・心穏やかになる場所・張り詰めるような緊張を覚える場所・わくわくする場所、それぞれに味わう感覚も強度も様々でしたが、その中でも最も印象に残るものから、少しづつでもこの感動を伝えたいと思います。

まずはやっぱりイタリアから。
イタリアではさすがに興奮する建築物や街並み・ランドスケープが無限にあったのですが、”建築とランドスケープ”という観点から最も感動したのは、一般の旅行者にはあまり馴染みがないかもしれませんが、ローマ近郊Tivoliの”Villa d’ Este”(エステ荘)です。
"建築とランドスケープの調和"の一つの生きた頂点をこの別荘で見ることができます。
建築家・造園家・芸術家は必見!



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国立の街路樹

国立は住人に愛される街です。
愛されすぎて時に住民運動や郷土愛が過剰ではないかと思うこともありますが、これだけ愛される街というのも全国でもなかなか稀なのではないかと思います。
愛される理由は人によって様々でしょうけども、各地の建築・都市・造園を興味深く眺めてきた視点から見ると、やはり大学通りと国立駅舎の存在が最も大きいと感じます。

今回は、まず造園の立場から大学通りを眺めると、桜とイチョウを交互に並べたことが街に決定的な効果をもたらしています。サクラ並木だけ、イチョウ並木だけが有名な場所は多々ありますが、2種を混ぜちゃった並木というのはなかなかめずらしいものです。




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国立 居心地の良い街

FURUKAWA DESIGN OFFICEは東京都国立市にあります。

国立市は都心から1時間ほど離れた郊外なのですが、昔から多くの作家や芸術家が住んでいます。設計事務所も郊外にしては多いのですが、特にランドスケープアーキテクトが好んで住む街でもあるようです。

ここは私の生まれ育った場所でもあるのですが、いつのまにかこの街が自分の好みや考えに大きく影響を及ぼしていて、つくるものに現れるようになっているな・・・と最近強く思うようになりました。
自分の原点はここだ! と思える街です。

豊かな暮らしのできる街とはどういう場所なのかイメージするのにとても参考になる街なので、国立の良さを少しづつ紹介していこうと思います。




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