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リビングのデザイン3

リビングのデザイン3回目は、旅で出会った理想のリビングの姿です。

私にとっての理想のリビングの姿とは、メキシコを旅して実物を体験して以来、メキシコの建築家ルイス・バラガンのデザインしたリビング・ルームのことになってしまいました。

中でも私の理想のリビングの一つは、ルイス・バラガンの代表的な住宅作品のうち、プリエト邸のリビングルームです。


プリエト邸の全体像は以前記事にまとめましたので、そちらをご覧ください。
http://furukawa-d.jugem.jp/?eid=20#sequel

このリビングルームは、まず平面の広さもすごいのですが、天井の高さも4m以上あり、日本の小さな家に住み慣れた私にとっては、ものすごい大きさに感じられます。
通常の日本の家の天井高は2.4m程度なので、2倍近くあります。



わりと普通のリビングルームに見えますが、ソファや置物のサイズも全て日本で通常目にするものの1.5倍ほどの大きさで、私にとっては巨人の家のように見えます。
しかし通常のサイズを超えることで、他に無い開放感や、特別な空間のオーラが漂っています。
"大きさ"以外は、非常に普通の部屋かもしれません。


ヒューマンスケールを超えているような広さなのに、大きな家具や置物を置いて居場所や見所をたくさん用意してあるためか、梁をそのまま現した木製の天井のためか、何か親密な雰囲気が漂っています。

通常のスケールを超えたモダンな部屋というのは、普通は非常に殺風景になりがちで、いまいち居心地が悪い場合が多く、こじんまりと囲われた空間のほうが親密な居心地の良さが生まれやすいものです。
ここでは大空間の中に居心地の良さそうな窓辺の場所が複数用意されており、それぞれの窓ごとに集まって座っていたくなるようなスペースとなっています。

ここを眺めていると、人は光に集まって過ごす生き物だ、ということがわかります。当たり前のことですが。

昼は太陽の光を求めて。夜は火の光に。




ひとつの大きな窓に対して大きなソファセットが据えられています。
大きくコの字型に囲い込むように配置されたソファが、親密な雰囲気を生んでいます。




窓の反対側は暖炉で、このソファセットが主に人が集まる場所となっています。
素材も形もざっくりとしてさりげないのですが、窓とソファと置物と暖炉で、高度に完成された眺めです。




人が立っていると、部屋の広さや家具の大きさがとんでもないことがわかります。
梁の大きさや家具の木の厚みも尋常ではありません。



ホールのような広さのリビングです。




棚に陳列する物も、もう動かせないくらい完全に美しく決められています。



下の写真は、もうひとつの窓辺のスペース。
メインのソファよりもこじんまりと集まるスペースですが、時間帯によっては、太陽の光の差込具合から、こちらのほうが居心地が良くなりそうです。
窓の外はピンク色のジャカランダの花と濃密なグリーンでいっぱいです。
窓があまりに大きいため、室内からでも緑がすぐそばに感じられます。




部屋の隅には、ライティングデスクと宗教的な置物が据えつけられています。




壁にかかった黄金のパネルやキリスト像、机の上に置かれた金の玉が、空間に神々しさを与えています。

このリビングルームの中の物は、全て家ができた時から全く変えられていないそうです。
家そのものと、家具や照明・置物等インテリアの全てがルイス・バラガンの作品であるため、当初の姿が大切に守られているのです。




こちらは隣のメイン・ダイニングです。
大勢の来客用のダイニングで、家族の食事用には扉の向こうに小さなダイニングが用意されています。
ルイス・バラガンの住宅には必ず、大人数には大きな部屋、少人数には小さな部屋が用意されているのです。




壁面いっぱいの大きな窓の外には、広々とした芝生の庭がはるかに見通せます。
また、外にも庭を眺めながら食事のできる、気持ちのよいテーブル席が用意されています。




室内は、壁面ごとに棚と絵と照明・置物でそれぞれ見所が設けられています。




壁面には大きなスイカの絵。
バラガンのつくった家には、よくリビングやダイニングに食べ物の絵や置物があります。


 

家族用のダイニングは天井も低く、こじんまりとした通常の大きさで、落ち着く雰囲気です。

 

 

プリエトロペス邸のリビング・ダイニングは、大勢の家族や来客が集まってのどかに過ごすための場所として、広大な空間に様々な過ごす場所が用意されていて、目的や状況、時間によって好きな場所に集まって過ごす、という自由で豊かな理想のリビングです。

非常に明るく、開放的で、木や石の素材感と外部の緑に包まれて和める、特別な空間です。

 

 


次は、ルイス・バラガンの自邸です。
こちらは独身のバラガン自身が暮らした家のため、本人と少数の友人のためだけのリビングです。

プリエトロペス邸と異なり、非常に静かで内省的な場所です。


リビングルームの構成は、天井の高い大空間と、壁いっぱいに取られたの大きな窓による庭の緑との一体感が印象的なリビングルームです。



窓が巨大な上、窓枠がほとんど無いせいで、室内にいても庭とつながっているように感じられます。
さんさんと降り注ぐ木漏れ日が非常に気持ち良さそうです。


 

窓の反対側には、読書のためのスペースと、絵を描いたり眺めたりするためのアトリエスペースが連続します。

こちらも通常の2層分の天井高があり、高い位置の窓から光が降り注ぎます。

 



これらのルイス・バラガンが設計した家からは、特別に心地よいリビングルームをつくるための法則のようなものが多数見つけられます。

・通常のスケールを超える、天井の高い大きな空間の気持ち良さ。
・大きな窓からさんさんと降り注ぐ太陽の光の暖かさと強烈な明るさ。
・庭と一体化するリビングの心地よさ。
・広い空間の中に家具と絵と置物でつくられた、親密な居場所。
・部屋に活気や潤い・荘厳さや楽しみなどを与える、装飾品やアート。

上記のような要素を、日本でつくる普通の大きさの家のリビングルームでも実現できないかということを常に試行錯誤しています。
ルイス・バラガンの家のリビングルームは、まさに私の理想のリビングの姿なのです。

 


いくら真似しようとしても、日本の風土や材料の違い、敷地・予算・機能・構造等さまざまな制約や実力の差から、なかなか同様な質の空間をつくるには至りませんが、共通する空間のエッセンスは、一部であっても実現できるのではないかと考えています。

これからも、少しづつであっても理想のリビングに近づけるよう、試行錯誤を続けてゆきたいと思います。

 

 

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