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日本の住宅地から社会を考える

今回は住宅地から日本の社会の一側面を考えてみます。
(東京の住宅地を念頭においていますが、多くの地方都市でも似たような状況が見られます。)

日本の住宅地は単に農道をアスファルトにして土地を切り売りしたものがほとんどです。
家が建て込んで住人が増えてくると、商店ができてきて、今度は学校が必要だ、公民館が必要だ、ということであわてて施設を整備していった、という過程で出来上がった地域がほとんどのように見えます。
ですから宅地化する前の地図を見ると、驚くほど道路の形はそのまま残っているわけです。
農地が切り売りした土地には、その時代ごとにもっとも安価に建てられる方法で思い思いの家が建てられました。
現代に限らず古来都市の発生とはそのようにして発生していったのでしょうから、そのこと自体は自然な成り行きで問題は無いのかもしれません。
要は都市計画というものなしに(もしくはインフラなどの最小限の都市計画で)自然発生的に出来上がった都市である、というのが日本の住宅地の特徴です。

別の言葉では、特にビジョンはなかった、ということです。
ビジョンは戦後長らく行われてきた"持ち家"政策です。個人が土地と住宅を所有して、自分の敷地内で好きなように建てた家の中でそれぞれの家族が快適にすごせる、ということです。
とりあえずどの家も都市計画で厳しく定められているため、日照と通風は確保できます。
道路はとにかく車のアクセスには最低限困らないようにはできています。停車する場所はありませんが。
畑は住宅地の中にも残されてはいて緑地とも言えますが、もちろん私有地ですから立ち入ってはいけない場所です。
そうしてできた住宅地の全体的な印象は、"めちゃくちゃだな・・・"というのが正直なところです。
外国人から見るとそのめちゃくちゃさがおもしろいそうで、近年世界中から注目は集めていますが・・・。



良いところももちろんあります。都市においても個人が自由に一戸建住宅を建てられる、ということです。これは最大の自由かもしれません。
また、東京は外国からは人口密度の極めて高い都市だと思われていますが、実際には都心部低層住宅地エリアに限れば人口密度としては世界的に見ても最も低い水準です。これは都心部にいたるまで低層の一戸建住宅てが埋め尽くしているからです。
日本以外の大都市の住宅地はみな中高層の集合住宅(マンション)がほとんどです。
一戸建てはもちろん"郊外"にあります。日本では"都心"と"郊外"の区別が無いのです。



さて、住まい手としてはこうして出来上がった街でいいのかというと、まあとりあえず生活できるのでいいじゃない、とは言えるかもしれません。その中で幸せな人も不幸な人もいます。多くの人は別に街に何の期待も疑問もないでしょうし。
しかし現在の住宅地の姿がベストであり、子供たちの未来の社会に残したいものなのだ、とは到底思えません。
都市環境は変化し続けています。
自然に町ができたときはまだ畑や林が住宅地と共存して割と自由に立ち入ることができたし、自動車も現在ほど多くはありませんでした。
子供が遊ぶ場所は非常に少なくなってしまいました。
老人が安心して歩ける道も極めて少ないです。
子供と老人だけのためではなく、普通の若者や大人にとっても同じことです。
ただ若者や大人はコンビニの前や遠くの公園や会社や繁華街など、自分たちで過ごす場所を選択できるので問題は少ないかもしれません。
しかし住宅地には大人や若者が過ごす場所も全く無いように見えます。

子供の遊ぶ場所はあるのでしょうか?
大人が散歩して歩ける場所は?
外でのんびり過ごせる場所は?
老人は安心して暮らせるのでしょうか?
未来の日本はもっと望ましい住宅地にする必要があるのではないでしょうか?



道路の使い方は変えられるのではないか?
今ある公園はもっと楽しい場所にできるのではないか?
街並みはもっと美しいものにできるのでは?
疑問がふつふつと沸いてきます。

50年後の身近な住宅地の未来の姿というのは、もう見えています。
道路や公園・公共施設などの街の構造は今とほとんど変化がないまま、畑は減って、住宅だけが現在典型的なハウスメーカーや建売住宅で建てられ続けているタイプに良くも悪くも置き換わります。今残っている古い感じの家はほとんど姿を消します。家のなかはますます電気設備が充実するでしょう。道路は相変わらずきれいでバイパスなどは引き続き整備されるでしょう。
そのような都市が私たちの望んでいた21世紀の未来像だったのでしょうか?

一方、都市計画されて形成された住宅地で、日本国内で成功している事例というものも結構あります。住環境が気になる人はこのような街を自分で選択して住むと良いかもしれません。
今後のエントリでいくつか事例を取り上げたいと思います。




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