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ヨットと建築2

前回に続き、ヨットがあまりにも興味深かったので、今回はさらに内部についてです。

ヨット全体を居住空間として眺めてみると、スーパーコンパクトで高密度な上、外も中も空間を使い尽くしている点があまりにも興味深く、住宅に応用すると面白くなりそうな空間がいくつもあるのです。


 
やや散らかっていますが、こちらはヨット中心部のリビングルームです。
住宅で言えばリビングとダイニングを一つにしたような場所です。
ダイニングテーブルとソファーが合体して非常にコンパクトなくつろぎ空間となっています。



天井は外部の流線型がそのままドーム状の天井になっていて、さらに木製の筋がつけられていることで、ドーム形状が強調され、ダイナミックな方向性が生まれています。
全体は屋根も床も壁も無機質なプラスチックに覆われた空間なのですが、わずかにリアルな木製の帯が入るだけで、居心地の良い居住空間の趣が生まれています。

だ円形の部屋・テーブルとソファ、ドーム型の天井により、極めて求心的な居住空間となっています。
嫌でも皆がこのテーブルに集まってきてしまいそうな空間です。



屋根はベンチも兼ねているため、屋外を眺めると面白い状況です。
ぐるりと360度の海を見渡せます。



スーパーコンパクトなキッチンと収納。日本の都心のマンションでは見慣れてしまっているようなコンパクトキッチンですが、収納の木の質感と取っ手の形に愛嬌があります。



だ円形のリビングの両側の船型の部分には、寝室が収まっています。
非常に急勾配な階段(ほとんどはしご)を降りると、左右にベッドルームが2つ設けられています。
リビングは真っ白いプラスチックの空間ですが、プライベートな寝室部分は全体が木質空間となっていて、がらりと趣が変わります。



階段を降りてベッドルームに向かうと・・・
どこかで見たような空間が。



これは、ほぼ日本のカプセルホテルのベッド空間そのものです。
双胴艇の船の部分の形をそのまま生かしてベッドルームがつくられています。
光は小さなハッチ状の天窓と小さな窓から差し込むばかりですが、意外なほど明るく、むしろ明るい照明を点灯しているような状態です。

室内は極めて狭くベッド上では立ち上がれないほどですが、荷物置き場とベンチもついて、かろうじてホテルのベッドルームと同様の機能が詰め込まれています。

日本のカプセルホテルと異なるのは、内部が全て木で覆われているせいか、狭いながらも意外に快適でくつろげる雰囲気となっています。



足元にも水面に向けて窓が設けられており、エメラルドグリーンの光が入ってきます。
ヨットを止めれば、水面下に広がるサンゴや魚が見えるのでしょうか。
小さいながらもカーテンまでついています。



極小の階段は、最小寸法ながらもステップが魅力的な丸みを帯びた形にデザインされ、小ささのわりに意外なほど上り下りしやすいです。
扉やハッチも全て流線型のヨットのデザインに合わせて丸みを帯びたデザインが施され、非常に優しい空間の雰囲気です。



反対側の寝室エリアに降りて行きます。
階段を降りた正面は、コンパクトなデスクが設えられ、右手にベッドルーム、左手が洗面・トイレ・シャワー室となっています。



スーパーギリギリ寸法の洗面所。
洗面器の向かい側はトイレが納まり、奥がシャワー室です。



全部でベッドルーム3つとリビング・ダイニング・キッチン・洗面所・トイレ・シャワー・書斎が小さな空間に見事に収められていて、3LDKの住宅と同様の機能が詰め込まれています。
狭いことは狭いのですが、内外に快適に過ごせるスペースが数多く設けられているため、10人程度で1日過ごしても非常に快適です。

室内の些細なディテールも非常に魅力的です。
天井の木製の帯は、エッジが丸くデザインされ、やさしい雰囲気を醸し出しています。
天井の白いプラスチックの部分のでこぼこは、ドーム屋根の強度を確保する梁のようなものでしょうか。



あちこちにつけられた木製の手かけも、流線型に沿う形の上にエッジが丸められて手に優しく、ヨット全体のデザインとも統一されています。



リビングのソファ脇にも小さな小物入れが設けられ、無駄な空間はわずかも残されていません。
床にまで収納が設けられている点は、日本の住宅事情にも非常に近いところです。



扉のディテール。円弧状のドアに、ドアの縁まで丸く削られてかわいい雰囲気です。
ドアノブも独自の形状で、コンパクトな空間に出っ張らず、ボタンを押して開閉する頑丈なデザインです。



外にも内部同様にコンパクトなリビング・ダイニング空間があります。
冷たい真っ白なプラスチックに、深みのある木の質感が美しく映えます。



これほどコンパクトなのに魅力的な空間は、初めての体験です。
狭くてスーパー高密度だからこそ魅力的なのでしょうか。
内部の求心性、外部空間の気持ちよさ、コンパクトながらも多機能な空間、居住に適した優しく和やかな雰囲気等、日本の狭小住宅の理想的な姿とも言えそうな、魅力的な空間でした。
これほどにコンパクトで魅力的な住宅、いつかつくってみたいものです。
私も多くの建築関係者同様、大きく影響を受けてしまったようです。
しびれました。

 

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