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渋谷に事務所を移転しました。

最近、渋谷区富ヶ谷に事務所を移転しました。
代々木公園のそばで、渋谷駅も自転車だとすぐです。

渋谷の街はいつでもあまりの人出なため、大人になってからは長らく避け続けてきましたが、大学時代以来久々に訪れた渋谷の街は、私にとっては興味深いものでした。

あまりにも猥雑でめちゃくちゃに見える渋谷の街には非常に魅力的な構造があり、回遊すると非常に楽しい街なのです。
このような街は世界を見回しても、他にはなかなか無いのではないでしょうか。

渋谷はその名の通り、谷状の地形をしています。
246号と明治通り、また山手線と東急東横線と銀座線・井の頭線等の交通の結節点となる渋谷駅は、その名のとおり、すり鉢状の谷の一番下に位置します。

周辺の道は、道玄坂、宮益坂をはじめとしてほぼ全て坂道で、街のどこにいても坂を下ると渋谷駅にたどり着く構造をしているため、なんとなく坂を下る楽な道へと歩いていると、自然と渋谷駅のガラスと、東急百貨店の格子状の壁でせき止められることになります。


その結果、建物自体の良し悪しはさておき、渋谷駅と東急の建物自体が強力なランドマークとなり、ハチ公前の広場にどうしても人が集まるようにできいるのです。


渋谷の街全体を空から見ると、渦巻き状に道が渋谷駅に集まり、台風の目のような形をしています。

放射状に広がる主要な街路は地形に沿って蛇行し、枝分かれしてゆくため、交差点の多くは三叉路で、方向性の無い迷宮のような街路構成をしています。

巨大な樹木が枝分かれする姿にも似た、非常に求心的な街の構成です。


めちゃくちゃです。都市計画も何もあったものではありません。

最近東横線の地下化で、さらに地下空間が迷宮化してたいへんなことになっていると話題ですが、そもそも渋谷の街全体がすさまじいめちゃくちゃさ加減です。

しかしこのめちゃくちゃな街路の構成が、非常に大きな魅力を生んでいます。


渋谷駅から街に出て行くと、坂道を上った先の目の前の三叉路の交差点にランドマークとなる建物が建つ、という繰り返しで街全体が構成されています。

三叉路の交差点に建つ建物の全てがランドマークとして存在感を放ちますが、中でもやはり坂道の正面に立つ109は、最もランドマークとしての象徴性を際立たせたデザインで、街の構造と立地を生かして一番成功しています。

普通これだけ迷宮化し方向性の無い街中では、誰もが方向感覚を持てなくなってしまうのですが、109や東急文化村・丸井・パルコ・東急ハンズといった交差点に建つ個性的なランドマークが道しるべとなり、めちゃくちゃな街路構造にも関わらず、渋谷ではまず道に迷うといったことはありません。

また、駅から放射状に広がる主要な道路をつなぐ細い裏路地や、スペイン坂等の階段の存在も、街中を回遊する楽しみを大きく高めています。


建物のスタイルのごちゃごちゃさや無秩序な看板もアジアならではの都市景観で、エネルギッシュな様相を見せています。
バブル期に作られたおかしな建物たちも、交差点でなくても際立った個性を見せ、町全体がどこかテーマパークのような様相を程しています。

近年では、欧米の整然とした街並みと対極にあるこのような猥雑な都市景観は、世界中の建築家や都市計画家から注目を集めています。



このような構造の街は世界のどこかで体験したことがあるな・・・と思っていたら、以前にこのブログでも話題にしたことのある、イタリアはシエナのカンポ広場でした。
見た目の印象はずいぶんと異なるのですが・・・。


シエナもすり鉢状の地形に作られた街で、迷宮状の街路は坂道を下るとすり鉢の一番下にあるカンポ広場に通じるようにできています。

さらにカンポ広場もすり鉢状の求心的な広場で、広場のどこにいてもすり鉢の焦点にある市庁舎に視線が集まってしまうような構造をしているのです。
そして市庁舎はその象徴性にふさわしく、高い鐘楼を持ち、明確なランドマークとなっています。

街中を歩くと、坂を上り、階段を下り、裏路地を通り抜け、トンネルをくぐるうちに様々な広場に巡り合う、非常に回遊して楽しい街です。


渋谷はシエナの歴史的な美しい街並みとはずいぶん異なり、アジアの都市らしいあまりにも猥雑で騒々しい雰囲気ですが、歩く体験や自然地形と街路・広場等の街の構造は、シエナと非常に似たものがあります。

渋谷もシエナも、自然地形の特異点に街の焦点が築かれ、それを基盤に発展を遂げたわけです。
広い関東平野の中でも渋谷は特徴的な地形を持ち、これほどまでに渋谷が独自の発達を遂げたのは、街の構造自体の魅力が大きく影響していたのではないかと思います。

数あるアジア都市の中でも抜群におもしろく、活気にあふれた街なのではないでしょうか。

その代わり毎日訪れると非常につかれますが・・・。


このような街は、つくろうとしてつくれるものではありません。
都市計画やアーバンデザインでは決して生まれて来ない、自然発生的に形成された村のような魅力を持っているのです。 

坂道、三叉路、ランドマーク、アイストップ、渦巻き状の街路、迷宮性、裏路地、求心性等、非常に魅力的な都市構造です。


渋谷には昔からありとあらゆるデザイン関係事務所も集まっていて、著名事務所もたくさんあります。
デザイン関連人口も多いためか、やはり関連書店やショップ・材料店なども充実していて、なかなか居心地の良い感覚があります。非常に意外でした。

当分楽しめそうです。


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