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HIGH LINE

ニューヨーク紀行に戻ります。
真冬のニューヨークで最も印象に残ったランドスケープデザインは、HIGH LINEでした。
2009年にオープンしたばかりの、廃線になった高架橋を改造した空中公園(?)なのですが、真冬にもかかわらずすごい人気なのです。

HIGH LINEは、1980年以降使われなくなって荒廃していた貨物用の高架鉄道を整備して公園に転用したものです。
貨物用鉄道は直接工場や倉庫にアクセスしていたので、公園となった今も高架橋は道路の上を走り、いくつかの建物を突き抜けてマンハッタン西部を南北に貫通しています。
南の端はチェルシーフードマーケットから北上してチェルシーのギャラリー地区を抜けてさらに北へ伸びます。


高架橋を下から眺めると、リベット留めの黒々として鉄が存在感を主張する。非常にごつい構造物です。


高架橋の上に上がると、公園の園路状のスペースが続きます。
しかしただの園路が延々と続くのではなく、トンネルをくぐり、大通りを横切り、ビルの間を抜け、リバーサイドの眺望あり、リゾートホテルのプールサイドのような憩いスペースありで、延々と歩いても飽きさせません。


1月末の最も寒い時期のため植物は枯れ果てているのですが、枯れてすさんだ姿が妙に都市景観と廃線の残されたレールや高架橋のハードな鉄の装飾などにマッチしています。


憩いのスペースには、公園とは思えないベッド状のベンチが設置されています。
こんなに寒いのに、また大勢の人々ががやがやと散歩しているのに、ずいぶんのんびりとくつろいでいます・・・。欧米に行くたびに思いますが、日本ではありえない光景。老若男女問わず仲がよろしいのには驚くばかり。




廃線になったレールをそのまま残して、動くベンチを載せています。


高架橋の構造はそのまま残し、線路も残していますが、草木も整備前に自然に生えていた種類を再び用いることで、廃線になって放置されていたときの記憶を継承しています。
ポジティブでない記憶も継承して整備しなおすことで、都市のストーリーとしてもデザインとしても厚みのある計画となっています。


残したものばかりでなく、新たに追加されたのは、独特な広場です。
下の道路の車の往来を眺めるためのシアターのような広場。


非常に珍しい景観なのですが、車を眺めながらおしゃべりするのも楽しく、ついつい長居してしまいそうです。ここも人気の場所です。


車に煩わされること無く歩ける貴重な道でもあるせいか、寒空の下でも驚くほど大勢の人々がぶらぶらと散歩しています。

 

ベンチはウッドデッキがはがれて持ち上がるような現代的なデザイン。


エリアごとに植栽計画にも変化がつけられています。
ここは中木の林のようなイメージのエリア。
ビルの隙間を歩きます。


ハイラインから下界の街並みを眺める。


ハドソン川も望めます。


建物の内部をくぐる。歩き続けるだけで非常に変化に富む体験です。


地上から見慣れた大きな看板も、目の前で見ると非常に印象的です。


園路のデザインは、プレキャストコンクリートの舗装とベンチや排水溝等もすべて既存のレールの方向性を強調する直線的なデザインとなっています。
プレキャストコンクリートの舗装は、エッジが細くなってしかも盛り上げられているため、草と舗装が噛み合うようなデザインです。
これは日本の公共空間の場合だと、お年寄りや子供がつまづいて怪我するからと、必ず却下されるようなデザインを実現しています。


ハイラインと接続されているチェルシー・マーケットは、これまた工場だった建物の一階を改築してフードマーケットとして再生したものですが、地元のグルメ好きや観光客などが多数訪れる人気のスポットです。


スーパーや各種食品店・レストランの集まったアーケードのようなつくりですが、古い工場のデザインを意図的に残してあり、フード・テーマパークのような楽しさです。


このチェルシー・マーケットとハイラインとギャラリー地区が一緒になって非常に魅力的な地域を形成しています。
どちら行っても驚異的な賑わいです。


たった一本の公園、というよりも歩行者専用道路が、周辺地域を活性化しています。

ハイラインの人気っぷりには驚くばかりですが、これを実現した都市計画になによりも脱帽です。
10年以上かけた、計画努力の賜物なのです。
廃線になって放置されていた高架橋をなんとか再利用するものはないものかと数回の利用方法のコンペを行い、住民と議論を続け、公園として利用することに決めた後、また国際コンペを行って最良の案を選び出し、それをコンペ案のまま実現させ、人気スポットとして地域の活性化につなげる、という理想的な成果を挙げました。


ハイラインでは、日本ではなかなか見ることのできない、「都市計画」の力を実感させられます。
都市の理想像を描き、実現し、大事に利用するという、当たり前ですが日本ではめったにできていないことをやってのけています。

都市計画というよりも、イギリスから続く緑地計画の伝統の強さかもしれません。
ニューヨークではハイラインの後にも港湾跡地などを用いて次々に公園を生み出しています。
しかも最新のデザインで。
公園のデザインも非常に自由で、建設費や完成後の維持費も日本の公園の比ではありません。
アメリカはまだまだランドスケープデザイン先進国です。

日本は伝統的に世界的な建築家は多数輩出しているのですが、ランドスケープデザインの分野ではなかなか欧米に追いついていないように感じます。


日本でも都心部に楽しい公共空間が増えると良いですね!



ハイライン誕生までの経緯はコチラの書籍で。

「HIGH LINE アート、市民、ボランティアが立ち上がるニューヨーク流都市再生の物語」
ジョシュア・デイヴィッド、ロバートハモンド著 
アメリカン・ブック&シネマ 英治出版


世界でも稀なニューヨーク都心部の高架鉄道跡上に実現した公園、ハイライン。その優れたデザインと極めて珍しい空間体験が、どのようにして生み出されたのか。都市デザインの理想の姿が、ここにある。

おすすめです。

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