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Washington National Gallery

さらにニューヨーク名建築巡りです。
ニューヨークを少し離れワシントンD.C.へ。
フランスのルーブル美術館を設計した巨匠I.M.PEI設計の名作、Washington National Gallery of Art, East Buildingです。
National Gallery所蔵の現代アートを展示するための別館です。
新古典主義のクラシカルな本館もすごい規模なのですが、現代建築好きとしてはやはり別館に興味があります。
誰もがこの建物のすごさを既に知っているためか、最近の現代建築の潮流と異なるためか、近年では建築業界ではあまり着目されていないようなのですが、訪れてみると質の高さと大きさがあまりに新鮮で、感動しました。
この建物の見所の全ては、中心の大空間にあります。
通常の美術館の展示室のような密閉された展示空間はわずかで、ほぼこの吹き抜け空間だけのための建物です。
この空間には、建築の楽しさ・喜びの全てがあると言っても過言ではありません。
 
建物全体は、放射状の都市計画道路に区切られた敷地をそのままなぞり、三角形の平面です。
 

 
三角形をそのまま立ち上げたような形をしているため、外観は非常にとんがっています。
 

 
内部に入るといきなりこの吹き抜けの大空間です。
 
 
 
驚くべきは、三角形の徹底です。
都市計画道路が決めた斜線に沿って全ての壁は作られ、通路が斜めにかかり、階段も斜めに走り、上部には同じ角度の三角形グリッドのトップライトがかかります。
 

 
さらに床面には敷地の三角形と同じ形の小さな三角形のライムストーンが敷き詰められています。
 

 
照明も家具も建物のあらゆる要素が同じ三角形のグリッドの上に載っています。
 

 
そこまでやるかと言うほどに、あらゆる要素が三角形グリッドに統一されて調和しています。
建築マニアはあまりの統一感に何か快感すら感じるほどです。
この徹底的な秩序の感覚も、建築の最大の快感の一つです。
ここまで統一すると、大自然の中にある三角形の組成を持つライムストーンの巨大で美しい岩盤をくり貫いて空間をつくった、と感じるような"凄み"が現れています。
石の質感と色があまりにも美しい・・・。
最近の現代建築では全く見られなくなった質の高さです。
 

 
一方で、グリッドが三角形であるため、空間に縦横に斜めの線が横切り、単純な構成の中にも極めて立体的で複雑な面白さが生まれています。
 

 
この建物には、通常の美術館のように広く密閉された展示室は無く、地下と壁の中にわずかな部屋があるばかりです。ほぼこの大空間と、ここに掛けられた現代アートのために建物が存在しています。
 

 
なんと贅沢な空間でしょうか。ほぼ具体的な機能はありません。
大きな空間の中を縦横に動きまわって、わずかな巨大なアート作品を眺めるためだけにつくられています。
立体的に歩き回って楽しむためためだけの建物とも言えます。
これほど贅沢な美術館は他に見たことがありません。
むしろ偉大な教会建築のように、祈りのためだけの空間にも近いのかもしれません。
 

 
階段を上がり、通路を歩き、見上げ、見下ろし、アートや緑を眺め、光を浴びながら歩き回るだけで非常に楽しいというのは、建築の最高の質の高さを物語っています。
立体芸術としての建築の見所、喜びの全てがここにはあります。
現代建築は、鑑賞したり理解するのが難しいと感じる方が多いかもしれませんが、National Galleryで体験できるこの立体的な回遊の楽しさが、最も素直かつ最高の現代建築のおもしろさであると思います。
建築って楽しいものだ、と改めて強く感じました。
このすばらしい空間の特質は、ワシントンやルーブル美術館まで行かなくても、日本でも滋賀県のMIHO MUSEUMで驚異的な質の高さで実現されています。
ぜひ現代建築の最高の楽しさ・おもしろさを、訪れて体験してみてください。
 
ワシントンナショナルギャラリー
MIHO MUSEUM

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