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ザ・ブライアントパークホテル

旅が好きです。
若い頃の旅は、一人旅が多い上とにかく建築や都市が見たかったので、食事やホテルにこだわることはほとんど無く、安ければOKのバックパッカーでした。
しかし近頃の旅は必ず同行する配偶者がいることもあって、食事やホテルにも気を配るようになってきました。
すると、旅そのものだけでなく、宿泊するホテルが非常に興味深く楽しみなものになってきました。
近頃では特に目的もなく、ホテルに滞在することのみを目的とする旅行もするほどです。

私にとってホテルは、住宅設計のモデルになります。
住宅ではなかなかできない予算のかけ方や、つくり方、立地などであるにもかかわらず、「のんびり過ごす」・「風呂」・「身支度」・「寝る」等、機能は住宅に非常に近いため、ホテルは「住まいの理想像」であると言っても過言ではないのです。
さらにリゾートホテルなどの施設全体の配置や庭は、ランドスケープデザインの理想像でもあり、世界の優れたホテルに対する興味は尽きません。

この世の様々なホテルの中には、世界のどこであろうと「自分の家」にいるようなくつろぎが得られ、自分の「家」に帰ってきたように感じられるホテルがある、ということに近頃やっと気づきました。
豪華さや高揚感よりも、それがホテル本来の役割なのでしょうけども。

それを強く感じたのは、ニューヨークのブライアントパークホテルでした。


ブライアントパークホテルは、ニューヨークのミッドタウン、ブライアントパークに隣接し、1924年に建設された歴史あるビルをリニューアルしたホテルです。リニューアルの設計をイギリスの建築家David Chipperfieldが手がけました。
ブライアントパーク自体もニューヨーカーに愛される公園のひとつとして非常に興味があったのと、モダンな雰囲気のホテルだということだけで選んだのですが、滞在してみると思いのほか居心地の良いホテルだったのです。


入ってみると真っ赤なロビーに、あまりにもモダンかつ殺風景な廊下。


部屋の中も装飾の一つもなく、ミニマムな様子。


だからこそ選んだのですが。
余計なものは何一つ無く、美しい照明と、木・リネン・革の確かな素材感のみです。


何も特別なものは無い部屋ですが、材料の選び方やディテールのシンプルさが、完全に好みなのです。

その結果「あれ、なんかうちの家に似てる」という感覚で、しばらく滞在していると自分の家にいるようなくつろいだ雰囲気を感じてきました。
一緒に滞在した妻も同様な感覚らしく、「なんか落ち着くね」というニューヨークにいるとは思えない感覚を覚えました。
もはや「和風」よりも「モダン」のほうが落ち着く体になってしまったようです。

自分がつくる部屋に似ているのはもちろん、私が若い頃からDavid Chipperfieldの作品を見て影響を受けているためでしょうけども。
しかしDavid Chipperfieldは写真で見ているとミニマリストの代表格のような建築家で「シンプルの極み」と言えるような作品ばかりなので、どこか冷たいイメージを持っていたのですが、実際体験してみるとまるでイメージが違いました。


浴室は大理石貼り。
決して高級には見えないのですが、個人で購入しようとするとなかなか値段の張る材料ばかりです。


自宅にもこんな洗面・浴室がほしい、と気軽に思ってしまいますが、洗面器ひとつ・蛇口ひとつ取っても、経済的にはなかなか難しいところです。


しかし、クチコミなどで一般の方の感想を見ていると、殺風景すぎて高級感もなく、かならずしも評判が良いわけでもないようです。
家具や素材も一見IKEAにあるシンプルな形のものと形だけは似ているので、安物に見えるのかもしれません。
けれどもここにあるのは、素材だけはしっかりとしたものばかりです。
単に私の好みがシンプルなものだというだけかもしれませんが、派手さはないもののなかなかにまっとうで好ましいホテルでした。

おそらく、ここで感じた自分の家にいるような居心地の良さは、これまで私が設計させていただいた住宅にお住まいのクライアントも、世界のあちこちで同様な感覚を感じることになるのではないかと勝手に想像しています。


真冬に滞在したために残念ながらブライアントパークの良さは体験できませんでしたが、冬の夜のブライアントパークはアイススケートで賑わっていました。


また世界中でさまざまなホテル巡りの旅をしてみたいと思う体験でした。


 

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