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桂離宮

日本の伝統建築と造園の最高峰、桂離宮についに行ってきました。
メキシコやアジアのリゾートは常夏の「楽園」でしたが、日本が世界に誇れる「楽園」があるとすれば、ここのことでしょう。
国内は元より、古くからブルーノ・タウトや ワルター・グロピウスなど西洋現代建築の祖からも日本文化の最高峰であると賞賛を受けてきましたが、評判に違わずものすごい迫力でした。

沿革はこちらでどうぞ。

桂離宮は京都旅行のついでにぶらりと寄ろうとしても、入ることはできません。数ヶ月前から往復はがきで宮内庁に申し込んで抽選で予約を取る必要があるため、かなり気合を入れて用意する必要があります。最近はネット予約もありますが、数ヶ月前でも常に満員でなかなか取れません。
そのためか参観者はどうやらお茶やお花など様々な専門を持つ方々や、かなり気合の入った庭園好きばかりのようでした。

ここは建築も庭園も日本文化の最高峰と言われていますが、全体としては池泉式の回遊式庭園であり、全体の構成やコンセプトなどよりもむしろ建物や石などのディテールに非常に凝った庭です。
どこにでもある回遊式庭園のようにも見えますが、すごい密度で見所が散在しています。


桂川沿いに離宮に近づくと、写真集で見たことのある生垣が・・・。何気ないササのような生垣に見えますが、背後の竹を生えてるまま横に引き倒して固定し、生きたまま壁状にした垣根です。どこにでもありそうですが、あまりにも特殊な生垣で桂離宮でしか見られないものです。


敷地外周の通路は、通常の竹垣と砂利敷の道・コケ・モミジの、京都ならばどこにでもあるような空間ですが、塵ひとつ無く隅々まで見事に管理されているせいか、すでに独特のオーラが漂っています。


桂離宮の庭で印象的な特徴の一つは、"軸線"です。
庭園内にはいたるところに大小さまざまな軸線がとられていますが、どの軸線も奥までは見通せず、行って回り込んでみて初めて全体像が見える、という体験の連続です。
何かあるぞ・・・と思わせて期待を高めて歩かせる、日本庭園独特の手法です。

こちらは刈り込みでつくった軸線の先を"住吉の松"と呼ばれる独特な姿の松で止めて、建物に入るまで庭園の全体像を見渡せないようにしています。


アプローチ沿いに書院に向かうと、門の奥は軸線が斜めに振られていて見通せません。


さらに門の先は建物の入口に対して斜めに通路が取ってあり、背の高い生垣が迫っているために近づかないと入口が見えないようにしてあります。


下が"御輿寄"と呼ばれる書院への入り口。
塀で囲われ、ここでも庭は見えないようにされています。

かっちりとした直線の通路も、切石の組み合わせ方が大きさも形もランダムです。
書院の主な入口のためか、コケの地面と石の面はフラットで、パラパラと撒いたような飛び石の配置にもかかわらず、ディテールからはキチンとした印象が伝わります。


直線と正方形と自然の形をバラバラに配置した、自由で楽しいグラフィック。

この庭園の魅力は"石"にあるといっても過言ではありません。
飛び石の配置の仕方、石の通路の作り方、質感、色、その全てに計算しつくされた"あそび"が溢れています。


下はモミジの通路。
こちらもまっすぐとられた通路の軸線から、土橋の向きだけがずらされています。

わざとずらすことで視線を斜め方向に向けさせたり、奥まで見通させない、斜めに見せることで美しく見せるなど、日本庭園では非常によく使われる手法です。
軸線を通すにしても、どこまでも単一に続いたり、完全な左右対称は必ず避けるのが西欧庭園との大きな違いです。
回遊式庭園の中に短い軸線が相当数詰め込まれています。


細かな石を敷き詰めた舗装が雨に濡れて美しく黒光りしています。


こちらの軸線は一旦途切れて、池をはさんで岸の向こうに続きます。


飛び石だけでも1つとして普通なものはなく、大きさ、色、質感も様々で、一つ一つの石に妙な"凄み"があります。
脇には竹のアーチで入らないで・・・と主張していますが、この配置もランダムで飛び石のリズムと関連づけてあります。


下は大きな切石と細かい自然石を組み合わせて作られた延段(=石の通路)。
こちらは土から10センチほど立ち上げて石を強調しています。
通路も飛び石も書院前と異なり、ワイルドなディテールです。


この部分だけでも"行の延段"と呼ばれる有名な延段なのです。(真・行・草のうちの"行")
全国の日本庭園の全ての延段は桂離宮の延段を模倣している、または意識して超えようとしている、と言っても過言ではありません。


小石を敷き詰めた州浜と"天橋立"ごしに"松琴亭"を見る。
モチーフはやはり自然界の雄大な景色のミニチュアです。


見る方向によって異なる景色が広がります。


池の周囲に散在する東屋は、春・夏・秋・冬をテーマに、それぞれの季節を楽しむためのしつらえと周囲の造園がなされています。春は"つつじ"、夏は"涼しさ"、秋は"月見"、冬は"あたたかさ"といったテーマです。
この"松琴亭"は"冬"で、暖房用の石炉が設けられています。

青と白の市松模様が非常に特徴的です。ここまで大胆な柄は日本建築では珍しいのですが、対岸の書院から丁度見える位置のふすまと床の間だけが市松模様にされているため、対岸からの視線を意識して作られたデザインかもしれません。



深い庇の下に池に面して水屋が設けられています。


築山を上る。わずかな高低差ながら勾配が急なため、山奥を歩く雰囲気が漂う。


下は"賞花亭"は築山の上にある"夏"の亭。


非常に変化に富む道行き。




ランダムな長方形と直線が絡み合う魅力的な飛び石。


非常にモダンな形態の土橋。水面から2m近く高いため、渡る際にはちょっとしたスリルがあります。橋の向こうには"笑意軒"が見えます。


"笑意軒"と呼ばれる田舎家風の茶屋。つつじの美しい"春"の亭。


窓の足元は金箔が斜めに切り取られる大胆な柄ですが、薄暗い中に金箔が鈍く輝くためケバケバしさのかけらもなく、荘厳な雰囲気です。
窓の外にはかつては水田が広がっていたそうです。


"鞠場"呼ばれる芝生の庭を抜けて書院へ。



洗練の極み、という言葉がまさに似合うようなたたずまいです。
高床なっているためか、他の書院とはまったくことなる軽やかさや、平等院にもにた飛翔感もあります。
こけら葺き屋根の形も非常にシンプルかつ軽やかで特に美しいものです。


地面は左が芝、建物周りはコケ庭で、敷瓦できっちりと分割されています。


下は"月見台"。池に面した幅2mほどの広縁。文字通り池に映る月を眺めるための舞台。
建物の中は非公開。建物の中から庭を眺めてみたいものです。


書院からの眺め。


やっと出口。圧巻でため息がでました。


建築も造園も、とても全てのディテールは取り上げ切れないほど、見所は尽きません。
庭園内に散在する灯篭や蹲・手水鉢等までもが一つ一つ名づけられ、特徴のあるものなのです。

一方、どの回遊式庭園でもそうかもしれませんが、そもそも桂離宮の全体像というのはどこからも見えません。どこへ言っても樹木や塀に囲われ、入り組んだ池の一部分、建物の一部分しか視界に入らないのです。
断片的な切り取られた景色の集積やディテールが桂離宮のイメージを決定しています。

その景色の完成度やちょっとしたディテールの"あそび"や豊かさが、他のあらゆる庭園とも異なる、桂離宮の見所ではないでしょうか。

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  • 2015/01/21 7:23 AM
   

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