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東京ミッドタウン

今回は東京ミッドタウンです。
こちらも六本木ヒルズとならび、世界の一流建築家・ランドスケープアーキテクト・芸術家・デザイナーのオンパレードです。
その中でも、日本国内のパブリックスペースで世界レベルのランドスケープデザインが体験できる場所というのはほとんど無いので、ランドスケープの部分について特に取り上げたいと思います。


ランドスケープデザインはアメリカのAECOM(旧EDAW)です。
AECOMはおそらく世界最大のランドスケープデザインファームの1つで、モダンランドスケープデザインの祖、ガレット・エクボが創設した事務所です。
なみに建築はSOM(Skidmore,Owings and Merrill)というスカイスクレーパーを得意とするアメリカの組織事務所のデザインなので、アメリカ式の最良の環境がここ六本木に形成された、といっても過言ではありません。(ご存知のように、21_21 DESIGN SIGHTは安藤忠雄氏、サントリー美術館は隈研吾氏が手がけていますが。)
デザインの特徴としては、現在ランドスケープデザインの世界で流行している形態やディテールが高いレベルで実現しています。
全体の構成は、建築本体の周囲を2本の園路と一本の水路が錯綜しながら取り巻くというものです。3本の帯が絡まりながら円弧を描くようなイメージの形態。
これにナナメに軸線や園路が挿入される、というのが全体の構成のイメージです。

空から見ると非常に優美なカーブを描き、美しい平面デザインをしています。


敷地の入口には低い噴水が設けられ、ここから敷地の奥へと水が流れていくストーリーとなっています。
園路はずっと奥まで大きなカーブを描き、美しい眺めをつくっています。
一口に園路と言っても、カーブやディテールが美しい園路と、美しくない園路の違いが大きくあるのです。


噴水が断続的に続きます。
常に2本の経路があることで、毎回異なる道を選ぶことができ、異なる角度から景色を眺められるため、何度も歩き回りたくなります。
噴水の下の黒と黄色の石の組み合わせや、植栽の中の石組みや噴水のグレーチングには違和感が残りますが・・・気にせず歩きます。


噴水はいつの間にか水路に変わります。所々で水路は段が作られて、水音を奏でるようにデザインされています。


2つの経路と水路が少しづつずれながら描く円弧と、ナナメにからんでくる植栽の帯が非常に美しいです。
奥には安藤忠雄氏設計のデザインサイトが見えます。これもすごく好きな建物ですが、あちこちに出てくるので、またの機会に。
景観としては建築とランドスケープが見事に一致・連携しており、高いレベルの調和を形成しています。


照明もオリジナルでデザインされていて、最上部の葉っぱのような板で光を受ける間接照明です。
ポールが弧を描く照明は非常に珍しいもので、植物のようなものとしてデザインされているようです。


下の写真のあたりに、このランドスケープデザインの最も良い部分(見所)が集約されています。


流れの終端なのですが、水路幅を広げ、段々と水を落として水音を大きく立て、円弧状の水路に対して飛び石(?)のような石の塊をナナメに差し込んでいます。ナナメの軸線は飛び石状の地面の石貼りまで続き、間には潅木が石と同じボリューム・軸線で挟まっています。
水路の縁も片側がナナメにデザインされています。


非常にうまいデザインです。ディテールも完璧で、ナナメに切られた大きな石の塊に非常に存在感があります。


ここでは、植物も石や金属と同様に、ボリューム(塊)として、またデザインの材料(素材)として扱われ、葉の色や特徴的な形、植えつぶしたときのテクスチャーを重視しています。
また、高木は林立する"柱"のように扱われています。
塊としての素材感や、カーペットの柄のような捉え方で、非常に西洋的な植栽の考え方なのですが、これが日本にあると非常に新鮮に見えます。
日本ではこのような植栽はほとんど行われていません。


東京ミッドタウンのランドスケープデザインは、アメリカン・モダン・ランドスケープの現在を体験させてくれます。
ランドスケープデザイン(日本では造園)のスタイルには世界各国様々なものがあり、なかなか正確な分類は難しいのですが、ミッドタウンのように"モダン・ランドスケープ"(現代ランドスケープ)と呼べるような場所は日本にはほとんどありません。
モダン・ランドスケープとはインターナショナル・スタイル(無国籍)のランドスケープとも言えるかもしれません。

日本にある公園等のパブリックスペースで、"デザイン"を感じることはほとんど無いと思いませんか?
デザインの対象として作られていないのです。
日本には独自の"造園"の世界が広がっており、そこでは、"自然"であることが重要であるとされています。
あたかも"自然に"木が生え、草が生い茂り、水が流れて溜まっている、ようにデザインすることが良しとされ、延々と手法が受け継がれてきたのです。
しかし、"自然さ"を追求するあまり、庭や公園にデザイナーがいることすら感じるのは難しく、公園においては、使う側はデザインに無関心、造っている側もデザインにはこだわらない、わざわざデザインしたように見せないようにする、といった姿勢でほとんどの公園が作られてしまったように私には見えます。

デザインの対象としてランドスケープデザインを行っているデザイナーは、日本では非常に少ないのです。
アメリカではオルムステッドがセントラルパークをつくり、"ランドスケープ・アーキテクト"という職能を確立して以来、現在に至るまで連綿と発展させてきたモダン・ランドスケープの100年以上の歴史がありますが、日本では近年まだ始まったばかりなのです。


私が実現したいと考えているのは、モダン・ランドスケープと呼べるようなもので、近現代の建築・アートやデザインのムーブメントの流れの中に位置づけられる、もしくは評価できるようなランドスケープデザインです。

モダン・ランドスケープデザインとは何か、実感するのは難しいのかもしれませんが、東京ミッドタウンでは、その日本では非常に珍しい事例が確かに体験できます。


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