May 2019  |  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

六本木ヒルズ

今回はオープンから既にずいぶん経ち人気も定着していますが、良くも悪くも何かと話題の多い六本木ヒルズです。
個人的にも以前勤めていた事務所でこの計画のランドスケープデザインに関わったり、学生時代に某著名事務所でテレビ朝日棟の模型を作ったりと、何かとご縁のある場所です。

建物の設計は、メインタワーがアメリカのシーザーペリ、足元のショッピングがジャーディーアソシエイツ、マンションとホテルはテレンスコンランプロデュース、テレビ朝日は槙文彦氏、ランドスケープは佐々木葉二氏、その他著名アーティストやデザイナーの作品が目白押しで、まさに世界のオールスターといったメンバーです。
建築・ランドスケープ・インテリア・アート・デザインの世界レベルが体験できる非常に稀な複合施設となっています。


これでもか!というほどに作り上げられた建築群の中で、私が着目するのはメインタワー足元の"ウエストウォーク"と"66プラザ"の基壇状の部分です。
黄色い石貼りの、ごつごつして迷宮状になっている、あの部分です。
六本木ヒルズは、世界の一流デザイナーの競演で、非常にお金がかかっていて、あらゆる高級店が集められ、様々な趣向が凝らされ見所満載・・・のはずなのですが、なぜか心に響く場所がなかなかありません。
六本木ヒルズに用事がある方は多いでしょうけども、六本木ヒルズのこの場所が好き!というお気に入りの場所のある方は意外と少ないのではないでしょうか?
いつ行ってもあまりにも人が多いためかもしれませんが。
また、それぞれの建築物の存在感があまりにも強く、ランドスケープデザインは見所に乏しく見えてしまいます。

そんな中でも私が興味深く眺めているのは、ザ・ジャーディ・パートナーシップ設計のメインタワー足元のショッピング部分です。
アメリカの大規模ショッピングモールのデザインで一世を風靡し、世界中で大規模なショッピングモールを手がけている事務所です。日本でもキャナルシティ博多やリバーウォーク北九州、大阪のなんばパークスなど、大規模なショッピングモールを次々に手がけています。
アメリカらしいエンターテイメント性にあふれたテーマパークのようなショッピング空間が持ち味です。


外観は円弧が組み合わされた平面が幾重にも積み重ねられ、ごつごつとした塊が出っ張り引っ込みし、非常に複雑な立面を形成しています。
ランドスケープを計画するために各階の平面を図面で見た時には、どのような空間が出来上がるのか全くわからないほどでした。
表面には様々な厚みと仕上げの黄色い石がランダムに貼り合わされ、地層のような縞模様を形成しています。
近くから見るとニセモノの石のように見えて良い質感というわけではないのですが、遠目に見るとなかなか絵になる、岩肌のような仕上げです。
まさに自然の岩場の地形を再現し、様々な空間体験とショップを組み込んだ独特な施設となっています。
岩山の中央には森アートセンターへの入口の螺旋階段が収められたガラスの塊が埋め込まれ、低層部の景観のシンボルとして機能しています。


さてこの中に組み込まれている空間は・・・
既に多くの方がお馴染みの下の写真のような空間なのですが、よくよく見るとなかなかに凝っています。


ジャーディ・パートナーシップのショッピングモールに繰り返し登場する、"キャナル(渓谷)"をモチーフとした谷間状の空間ですが、ここでは非常に複雑な立面が形成され、黒く見える部分には滝まで作られ、階段状に水が流れ落ちています。一階部分を歩いていてもなかなか気づきにくいのですが、通常圧迫感のあるショッピングモールの谷間部分に、屋外の景勝地のような感覚を与えています。
ここでは、地形を人工的に形成し、植物を植え、水を流すという、ランドスケープデザインと同様の作業によって建築空間が形成されているのです。


しかも渓谷の間をブリッジが通り、トンネルをくぐり、迷宮状になっている通路を回遊しながら様々な高さから見上げ、見下ろす、という多様な体験がデザインされています。
歩きまわらないとどんなショップや眺めにめぐり会えるかわからないため、奥へ奥へと歩き回りたくなってしまうような計画です。


しかし一方でこの空間の複雑さと迷宮性ゆえに、店舗は非常に小規模に分散し、ディスプレイできる壁面も少なく、店舗内はどこも非常に使いにくそうなレイアウトで苦労している様子が伺えます。


歩き回るにつれ、非常に狭い通路、洞窟上の暗い通路、細い渓谷の上部から漏れる光、なだらかな階段、次々に現れるレストランやショップ、眺めの良いテラスなど、実に様々な空間体験が展開され、全体像はいつまでたってもわからないほどで、どこまで散歩しても飽きさせません。


しかもすべて同じ天然石の地層状のテクスチャで統一されているためか、複雑な形状や様々なショップがあっても空間にしっかりとした統一感があります。


上の写真は隣接する毛利庭園からの眺め。
当然このように自然の地形を模した建築物は、本物の草木や池などの自然の要素や庭園の回遊性と完全にリンクし、調和しています。
六本木ヒルズの建築物同士は各デザイナーが得意技を競い合い、調和しているとは言いがたいのですが、毛利庭園とショッピングモールの部分だけが完全な調和を見せており、個人的には好きな部分です。




この毛利庭園自体もなかなか興味深い出来です。かつてここにあった大名庭園を再現したものなのですが、モダンな日本庭園として作り直されています。
樹種は古典的な日本庭園でよく使うものばかりなのですが、配置の仕方はやや西洋式のグラフィカルなやり方だったり、また、古典日本庭園的な池と小川が作られているのですが、池の形や護岸のつくり方、石の組み方などが非常にあっさりとしています。
その結果、旧来の日本庭園にはないさわやかさ・軽さと現代的な感覚が生まれています。
テレビ朝日棟の周りの広いエリアにも高木が一本も植わっていないためか、西洋的なランドスケープデザインのようにも見えます。


六本木ヒルズでは、アートセンターや高層階からの大パノラマ、クリスマスのイルミネーションといった様々な通常の楽しみ方ももちろん良いのですが、よくよく見てみると非常に興味深いデザインやアートが無限に散らばっているので、行く度に様々な新しい発見ができます。
皆さんもぜひ改めてヒルズ探検をしてみてください。


comments

   

trackback

pagetop