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せんだいメディアテーク

すごいものを見ました。
せんだいメディアテークです。
10数年前に伊藤豊雄氏の案がコンペで選ばれ、その独特な構造方法から世界中で非常に話題になった建物で、図書館、公民館、文化ホール、イベント・展示スペースが一体となった公共複合施設です。
機能自体は最近はあちこちで見られる複合施設なのですが、ここでは建築自体が驚異的なものになっています。
これは"すごい"としか言いようがありません!

この建物の見所は、柱が無い!ということに尽きます。
正確には、柱が細い鉄骨を束ねたチューブになっている、という点です。
それがこの建物の全てなのですが、このことが驚異的な結果を生んでいます。


コンペ案はこれです。


海草のようなメッシュ状のゆらゆらした構造体が床を支える、というコンセプトでした。
実際にできたものは・・・コンペ案とはちょっと違ってゆらゆらしてはいるのですが、非常にチューブが力強く、全く異なった印象を受けます。
当初の繊細なイメージはさておき、現実の建物を目の前にすると、非常に未来的で、見たことも無い面白い建物が出来上がっています。


チューブの中にはエレベーターや階段・設備など建物を縦方向に貫く機能が全て納められているのですが、特にエレベーターが上下に移動する様が照明によって強調されています。

エレベーターが通り過ぎるたびに空間に光があふれ、何か近未来の乗り物が通り過ぎるようにも感じられるイリュージョンが生まれます。


あ・・・来る来る・・・来たー!という感じです。非常に楽しい。


エレベーターを眺めているだけでも飽きません。
まさに越線橋で小学生の男の子が電車を通り過ぎるのを待っている状態になります。
こちらも・・・


あ・・・


来たー!


エレベーターに代表されるように、建物内部は、通常の静的な建物と違い、どこか活動的な雰囲気に満ちています。
建物というのは本来動かない非常に静的なもので、芸術性を突き詰めれば突き詰めるほど、ミニマムで静けさを湛えたものになっていく場合が多いのですが、この建物からはアクティブなパワーのようなものを感じます。
活動的な建物というのは、通常ショッピングセンターやイベントスペースなど、派手で仰々しいごたごたした環境が多いのですが、そういった低俗な建物の雰囲気ともまるで異なります。
極めて現代建築的なのに活動的なイメージを持つ、非常に珍しい建物です。

図書館は普通に図書館なのですが、図書エリアが閉まっても、夜遅くまでロビースペースは開かれ、自由にコンピューターや雑誌などのメディアにアクセスすることができ、常に賑わっています。


イベントや展覧会も活発に行われているようで、老若男女問わず様々な人が気軽に利用している様子。
通常の公民館のように勉強したり会議を開いたりもできるのですが、市民がいつでも自由に使えるスペースが非常に広い印象です。


建物の面白さや力強さが、市民の活発な活動を生み出しているように見えます。
公共施設のため、掲示板やら雑多な家具やらいろいろなものが結構ごたごたと置いてあるのですが、建物自体の力強さのため、建物の価値を全く損なっていません。


特異な構造の建物を可能にしたのは、現代の技術で可能になったコンピュータによる3次元の解析技術と、もう一つは、ローテクの極みの造船技術でした。
鉄骨のチューブは全ての部材が異なるため、人間の手により一つ一つ部材を溶接して組み上げられているのですが、これは気仙沼の船を作る職人の3次元の金属加工技術によるものです。
非常にハイテクに感じられるのに、一方で人間の渾身の手作業の跡が感じらることも、この建物の魅力の一つなのかもしれません。


地下駐車場も青い照明のせいか非常に未来的です。


ここは、ガラスと金属とチューブ状の構造によって生まれた空間が、宇宙ステーションのような感覚ですごく未来的なのですが、未来って意外と悪くないんじゃないか・・・と素直に感じられます。

従来とは異なる「未来」のイメージがここにあります。
これまで映画や絵画の中に描かれてきた「未来」のイメージは、何か非人間的でメタリックで、とがってかっこいいが、どこか退廃的・・・みたいなものが従来の未来のイメージでしたが、ここにある未来像は、テクノロジーが人間の自由で活発な活動を促し、支える、というポジティブで力強いものです。

どうやら「未来」は自分たちで「つくる」べきもののようです。


どんな「未来」を描けるのかが、私たち設計者の究極的な仕事なのですが、未来を描ける設計者はほとんどいません。自分も含めほとんどは過去をなぞっているだけです。
非常に難しいことですが、「未来を目指す」ということがどれほど大切か、ということを体感できる施設でした。

 

最近、近年の代表的な建築作品を巡る機会に恵まれましたが、いつの間にかこの10年で非常におもしろい建物がいくつも生まれていました。
芸術の世界では、現在は非常に興味深い、時代の変わり目です。
世間は不況だのなんだの言っていますが、近年の日本の文化的な成熟には目を見張るものがあります。
芸術・建築・デザインなど様々な業界で、これまで見たことも無いものが生み出され続けていますが、その中でもせんだいメディアテークは、今という時代を代表するものの一つであるようです。
東北地方を訪れた際は是非、「建築の未来」を体験してみてください。


せんだいメディアテーク

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