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モロッコ EL REDUCTO

スペイン・モロッコ旅行に行ってきました。
アルハンブラ宮殿がメインの目的だったのですが、モロッコでとても印象的なホテルに泊まったので、まずはこちらから。
今回の旅で最も印象に残った場所かもしれません。

夢の中のようでした・・・。


 スペインからジブラルタル海峡をフェリーで渡り、港町セウタから徒歩で国境を越え、タクシーに乗ること1時間。
ようやくたどり着いたのが世界遺産ティトゥアンの街です。
迷宮のような街並みの中に全く目立たない入り口が・・・。他の建物とは異なるタイルだけがホテルの目印です。(写真右)


カラフルなドアを開けると、どこもかしこも真っ白で雑然とした街並みとは全くの別世界が・・・。


中に入ると、圧倒的な密度の装飾とトップライトからの光が出迎えます。
吹き抜けを中心に周囲を部屋が取り囲む伝統的なモロッコの住宅様式で、かつての資産家の住まいをホテルとレストランに改装したものだそうです。
ホテルといっても客室は2階と3階に4部屋あるのみです。
外の喧騒と暑さがウソのように、ひんやりとした静けさに支配された、濃密ながらも非常に落ち着いた内部空間です。



1Fはレストランで、吹き抜けの周りの小さな空間が客席になっているのですが、
この4・5人も座ればいっぱいの小部屋が、非常に狭いのに人が空間にぴったりとはまる感覚で不思議と居心地が良いのです。吹き抜け側を望めば空間に奥行きと広がりも感じられます。

窓の外の泉からは水の音が常に小さく響き、冷やされた空気が吹き込んできます。直接外に面する窓は一つも無いのに、中央吹抜け上部の換気と窓の外の吹抜けで、煙突効果と呼ばれる自然の通風を生み出しているようです。



もう一つの小部屋。こちらは真紅の絨毯とクッションが幻想的なイメージ。高い位置にある小窓で階段室とつながり、こちらからも通風を確保しています。


さて、階段を上がって正面の扉の向こうが客室です。


客室も幅が3mもない長細い狭い部屋ですが、天井高が4m近くあるためか狭さを感じさせません。内部の壁はピンク色に塗られ、室内の全てが装飾と色彩で埋め尽くされているのですが、薄暗いせいか妙な"凄み"があります。


部屋の隅には何の仕切りもなく浴槽が鎮座します。非常に女性的な色彩と装飾ですが、どれも伝統的な装飾で周囲の環境と馴染んでしっくりきているせいか、男性にとっても不思議と居心地が良く、あまり嫌味がありません。


このディープな本物の質感と色彩。水平も垂直もなく、日本人にはつくれないラフさ加減です。インテリアは決して古いものではなく、新しく作ってもこのような質感と装飾で統一できることは、日本人の感覚では驚くべきことです。


外部の小さな吹抜けに面した窓の印象的なステンドグラス。


ソファに座って吹き抜け側を眺める。


窓は全て吹抜けを向いており、光も空気も吹抜けを通して部屋に入ってきます。
窓を開けても室内なのですが、植物と光のせいかほとんど屋外のように感じ、どの部屋も狭いのですが窓さえ開けおけば窮屈には感じません。
これは日本の住まいとは全く正反対で、部屋は外には全く開かれておらず、全てが中心の吹き抜けに向かって開いています。
通風も採光も生活も吹き抜け無しではありえない、極めて求心的な住まいです。


やはり特筆すべきはその居心地で、狭いのに、外に向かった窓も無く密閉されているのに、なぜかこの空間の中で一日中すごしても快適なのです。不思議と外に出たくなりません。むしろ外にいても喧騒と強烈な日差しから守られたホテルに戻りたくなります。

やたらと濃密な装飾と色彩も、一日過ごすとすっかり心地よく感じてきます。もしかしたら屋内で長時間過ごすためには必要なものなのかもしれません。室内にあまりにも高密度に装飾やモノが詰まっているためか、世界の全ては室内にあり、この中だけの暮らしでも充分な豊かさに思えてきます。

おそらくは過酷な気候を避けるため、またイスラムの女性がめったに外に出られなかった時代に生み出された、生活空間を豊かにするための知恵なのでしょう。

ネコもとても快適そうに過ごしています。快適だから動物も寄ってくるのか、動物がいるから快適なのかはわかりませんが、豊かな空間にはどこも小さな動物がいます。


現地の人々のファッションも濃密な空間に良く似合います。


レストランは地元の人々にも人気があるらしく、夜には1Fのレストランが大騒ぎになるのですが、まるで自分の家にお客さんが大勢やってきたような雰囲気です。


このホテルでは濃密な装飾とインテリアに目をうばわれがちですが、
・2つの吹抜けの煙突効果による自然の通風システム
・部屋と吹き抜けをつなげることでタテヨコに広がる、小さくとも居心地の良い空間
・トップライトからの光
・外部の喧騒や日射からの完全な遮断
・濃密な装飾と色彩の空間
など、日本の密集した都市部の住まいにも生かせそうな知恵がたくさん詰まった、極めて印象的な建物でした。

あまりにも日本の住まいとは対照的で、これほど密閉されているのに豊かな生活空間は初めて経験しました。
生活空間のイメージが激変するので、多くの方にぜひ一度体験してもらいたいものです。





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