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パリのアパルトマン


しばらくメキシコが続いたので、今度はフランスです。まずはパリのアパルトマンについてです。

10年ほど前パリを訪れた際に、友人の紹介でフランス人インテリアデザイナーの住まいを見せていただく機会がありました。ご本人の職業を含めて非常に素敵なパリらしいライフスタイルと住まいだったので、強く印象に残っています。

パリ中心部のアパルトマンの、しかもペントハウス(最上階)に住むというライフスタイルは、多くの日本人にとってあこがれの暮らしの一つではないかと想像できますが、ここでの暮らしを見ることで、日本でのライフスタイルや住宅について改めて考えさせられました。

場所はパリ市庁舎のそばで、築2〜300年ほどの6階建てのパリ都心部に典型的な石造のアパルトマンです。


建物に入ると階段はうっそうと暗く、当然エレベータは無いので6階まで歩いて上ります。途中で休まないと上りきれません。


室内はすべてしっくい塗りで、古い小屋組みの梁が見えています。ペントハウスなので屋根がそのまま室内になっています。
インテリアデザイナーらしく、さすがに照明の使い方や家具のチョイスが優れていますが、基本はなるべく手を加えずに古い建物をそのまま生かして暮らしているようでした。
漆喰・木・石・鉄など、当然ですが全てが本物中の本物の材料でできています。


部屋の中心には大きな暖炉が鎮座します。薪ストーブなどと違い、何の覆いもなく目の前で薪を燃やす最も古典的なものです。もちろん煙突はあるのですが、全部の煙を吸い込んでくれるわけではないので部屋中煙だらけになり、しょっちゅう換気する必要もあります。しかしダイレクトに火を囲んで温まる心地良さと楽しさは屋外でのキャンプファイヤー並で、強烈なものでした。家に訪れる人々全員がこの暖炉の周りに集まって、長居してしまうでしょう。


照明は過ごす場所ごとに一つづつ白熱灯があるのみで、しかも全て床や壁を照らして間接照明にしています。日本人にとってはものすごく暗いのですが、必要な場所には灯りがあるので、慣れてくるとこれで充分、と感じてくるので不思議です。

この小さな机でインテリアデザインの仕事をしているそうです。天井(屋根)もあまりにも低いのですが、すごく居心地の良さそうな机です。


ベッド(ふとん)まわりも頭をぶつけるほどの天井高さですが、小さな窓から眺める夜景が最高です。


ここでの暮らしは日本の一般的な家庭とはあまりにも異なっています。
部屋の真ん中にぶら下がる蛍光灯も無ければ、家電も便利グッズも何もありません。テレビもなし。もちろんエアコンもありません。便利収納もなし。キッチンも最小限のコンロとオーブンとシンクがあるのみです。ペアガラスも断熱材も雨戸も網戸もなしです。

無いものはいくらでも挙げられますが、全てが無い替わりにあるのは唯一つ、素晴らしい空間の居心地のみです。

暖炉廻りが広々として天井もかなり高いので、狭さや天井の低さもあまり感じません。

非常にシンプルな生活です。
建物が備えているのはほとんど暖炉と漆喰の壁のみに見えます。
また、ここでのライフスタイルは、おそらく建物のできた数百年前からあまり変わらないものでしょう。ろうそくが電気に、キッチンにガスが入った程度ではないでしょうか?


このような住まいを見ていると、日本の住宅が追い求めているものは一体何なのだろうと思ってしまいます。多種多様で毎年変わっていく電気設備や家電、宣伝文句の断熱性能やおそうじのしやすいニセモノ材料や使い勝手や機能をことさらに謳う設備や限りない便利グッズの数々。自分を含めて何か家に本来必要なものを見失ってしまっているように思いました。

日本の住宅は、日本人が得意とする車や家電と同様な特徴を備えていて、良くも悪くも家電のような家に成り果てていると感じました。ひたすら便利さと機能を追及していて、モデルチェンジを繰り返し、次々に機能を追加し、どんどん買い換え(建て替え)、常に新しさを求める。
その結果失っているのは、このアパルトマンと正反対で、居心地や空間の素敵さ、シンプルなライフスタイルでしょう。

どちらの暮らし方が良いということではなく、日本人が見失ってしまっているものがここにはありました。


一方、話を伺ってみて驚いたのは、この素敵なペントハウスに住む方が、日本のデザインに非常に興味を持っていて、日本の偉大なデザイナー倉俣史朗にあこがれてリビングの鉄筋のイス(写真)をデザインしたということです。
また東京のインテリアデザインにもあこがれて、最新作のカフェをデザインする時に、私たちが見慣れているつるぴかな東京っぽいデザインにしたそうです。
言われてみれば確かにパリにはアンティークやデコラティブなインテリアデザインばかりで、プラスチックや金属のつるぴかなデザインやストイックなデザインのものはほとんど無い・・・。
非常に意外でした。お互いに自国に無いものにあこがれているようですね。




 

comments

お返事ありがとうございます。
多分、白のフローリングにすると思います。

最近の家は結露がひどいので、モルタルは使わない様にしようと思っています。
海外を旅行してるんでしょうか?
素敵ですね(^^)

  • ナオコ
  • 2012/09/15 6:20 AM

ナオコさん
現地で確かめなったので確かではありませんが、白いモルタルかもしれません。かなり硬かった記憶があります。

日本の住宅で床を白くしたければ、タイルかモルタルか白いフローリングあたりが良いかと思います。

  • フルカワリョウタロウ
  • 2012/09/14 4:49 PM

床材白いですが、木材ではないですよね?
なにを使われてるんでしょうか?
家をリフォームするんですが、参考にしたいです。

  • ナオコ
  • 2012/09/13 7:19 AM

Redappさんこんにちは。
レンタルアパルトマンいいですね!今度私も利用してみたいです。

日本でもおそらくアンティーク家具やファブリック等で向こうのテイストは結構出せるのではないかと思うのですが、現地の住宅では床材や漆喰の荒々しい迫力が印象的で、あれはなかなかマネできない味わいだな・・・と思います。

ライフスタイルや価値観は長い年月を経て形成されるものでしょうから簡単には変わらないですし、どちらが良いということは言えないのですが、個人的にはヨーロッパのモノや生活に対する価値観のほうに強く共感します。

  • フルカワリョウタロウ
  • 2011/12/07 4:24 PM

こんにちは。
パリのアパルトマン風な内装を家でも実現したくて、色々検索していてこちらに到着しました。
インテリアの紹介もしかりですが、住まいに関する私達日本人の日ごろの姿勢に対する見解、とても興味深く、また共感しながら読みました。
パリのアパルトマンへの憧れはとても強くて、実際に短期レンタルのアパルトマンを借りたり(http://www.private-homes.com/paris/)という体験はしているのですが、なかなか、日本の家にインテリアを当てはめるというのが難しくて。
でも、パリ在住の友人の話や家をのぞいたりすると、パリの人々は日本に比べて、水と電気を大切に使うんだな、という印象があります。日本では逆で、このごろでこそあの事故以来節電が呼びかけられていますが、今だに電気の無駄遣いは各所に見られますし、水に至っては、フランス人の何倍使っちゃうんだろう?というくらい。
インテリアだけでなく生活スタイルを見直したくなるブログのメッセージ、姿勢を正して読みました!

  • Redapp
  • 2011/12/05 9:56 PM
   

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