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環境のクオリティ

建築を志してからこれまで十数年の間、西はヨーロッパから東はアメリカ大陸まで、世界の様々な場所を訪れ、多くの名作と呼ぶべき建築や都市・ランドスケープにめぐり会ってきました。また、無名ながらも光る作品や、長い年月の中で無作為に出来上がったような素朴で美しい 街並みや古い建物なども数多くありました。

思い起こせば、場所も文化も異なりそれぞれその感動の種類はいつも違ったのですが、名作と呼べるような作品や深い感動を呼び起こす場所には、ある共通の「クオリティ」のようなものがあったように思うのです。


多くの優れた環境に共通する要素としては、
1.周囲の自然環境や社会・文化・機能に根付いた必然的な形態(デザイン)。
(地域に元々ある建物や環境からかけ離れたものではなく、それほど違わない形態や材料であるため、自然に環境に溶け込む。)

2.連続する空間体験の多様さ。(様々な広さや感覚の空間があり、体験した際の驚きや感動が計算されている。)

3.石・木・土・鉄などの主に地域で産出した本物の素材。

4.水・植物・動物などの自然の要素。

5.それぞれの文化や時代を象徴するアート。

6.特別な「静けさ」「あたたかさ」「荘厳さ」といった雰囲気。



そのような要素が一つだけではなく建築・造園・家具・自然環境が複合的に「全て」満たされ、その上で特徴的な固有の「空気」を持っている、ということがあらゆる名作環境に共通していました。反対にそこにないのは、ぺらぺらで偽物のプリントビニール材料や、騒々しく意味のない形や音などの「混乱」、また単に一つの要素に特化した「単純な」環境です。



これは、伝統的な環境でも現代の名作建築などでも全く同じことでした。専門家も一般人も、多くの人が良いと思う環境にはやはりそれなりの理由があります。



日本でも京都などの伝統的な「寺院と庭」や白川郷に代表される古い「民家」、また伊勢神宮や羽黒山のような山岳寺院などの壮大な自然の空間を利用した宗教的に重要な場所で、このような「環境のクオリティ」は体験することができます。



私が住宅やランドスケープなどの設計を通じて実現したいと日々考えているのは、そのような総合的な「環境のクオリティ」です。小さな一軒の住宅も、周辺状況・建物・庭・家具・アートなどの複合的な環境で成り立っています。

そこに世界の各地で体験してきた優れた環境の持っていた要素(形ではなく)をわずかずつでも一通り持ち込み、各要素の関連づけと調和を計画すると、やはり程度の差こそあれ、優れた環境が持ち合わせる「静けさ」「あたたかさ」「荘厳さ」などの特別な「空気」が生じてくるのです。



そのような「空気」はその場所に長く滞在し、一年中暮らしてみて初めて、じんわりと「ああいいな」と思うような種類の体験なので、写真や文章で伝えることは難しいものです。しかし小さいながらも家や庭として実現することで、そこで暮らす人に少しずつ伝え、この世界に生きる喜びのようなものを感じてもらうことができたらと思っています。 

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