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テーブルのデザイン

メキシコが続いたので今回はちょっとユルいエントリーで、テーブルについてです。

世の中には様々なデザインの家具があふれています。中でも椅子は歴史を通じて様々なデザインや機能のものが考案されてきました。名作と呼ばれるようなものもたくさんあるのですが、形だけでなくすわり心地も様々で実に楽しいものです。
これまで椅子にについては大変興味を持って相当数の椅子に腰掛けてみたりデザインを楽しんできたのですが、テーブルはまあどれも似たり寄ったりだと思ってあまり興味を持ってはいませんでした。
しかし、テーブルにも奥深いデザインがある、ということに気づかせてくれた家具があります。

イギリスERCOL社の"ROUND DROP LEAF TABLE"というテーブルです。
ドロップリーフという名の通り、両側が折りたたみ式になっています。Lloyd's Antiquesによれば1960年代頃につくられたもののようです。
Margaret HowellがErcol社の同時期に作られた椅子を復刻したりして近年そのデザインが見直されています。イギリスのカントリー調が好きな方々にも人気のようです。

何が見所かと言うと、まずは天板。
全体のフォルムは単なる丸かと思えば、何とも言えない微妙な楕円を描いています。写真手前と奥が2人で座る場合に主に使う部分ですがこの部分はカーブがユルく、折りたたみ時に折れる両側はカーブがきつく、やや尖り気味になっています。こちらは折れるのでやや安定感に欠けるため、普段はあまり使わないサイドです。
さらに天板はエルム(楡)のムク材のはぎ合わせでできていますが、真ん中は木目がまっすぐで、折れる分け目のところから両サイドはゆがんだ木目が強く出た板が使われています。このため折れる板の分け目はまっすぐの木目になじんで非常に見えにくくなっていて、両サイドのカーブがきついところに向かうにつれ木目もゆがんでカーブになじむデザインとなっています。木目はテーブル一つ一つ違うので、たまたまか?とも思いますが、それにしてはうまくできすぎています。

また、モダンアンティークとは言え、60年代につくられた当初と同様な仕上げなため、蜜蝋で1月に一回ほど磨く必要があります。すごく面倒だと思っていたのですが、蜜蝋を摺りこみながら磨くとこれまた何とも言えない飴色の光沢が出て、輝きを取り戻します。これがなんとも言えない心地よい感覚で、よく家具の手入れをすると愛着が沸くと聞いてはいましたが、本当でした。なぜかテーブルに愛情が沸いてきます。アンティークマニアでもないのですが・・・。

 

エルムのつややかな木肌は真っ白な食器や輝くグラスなどを引き立たせます。



次にディテールですが、テーブルの縁は面取りがしてあって丸くなっているのですが、これも断面が微妙な曲線でできています。写真ではわかりにくいのですが、断面は3つの大きさの異なる円を組み合わせてできていることで、なだらかに落ちて角がキュッと丸くなっていて、天板がものすごく薄く見えます。徐々に落ちているのでテーブルの縁に手を置いたときに優しいさわり心地で、手の収まりが良い感触があります。カップなどの口に触れる器のエッジのデザインに近いディテールのつくり方です。



次は4本の足ですが、日本の木製テーブルではあり得ない細さで、しかも先端に行くにつれさらに細くなります。足の細さと天板のエッジのディテールで薄く見せていることによって木製テーブルでは普通あり得ない軽やかさを生み出しています。しかも数十年を経ても現役の頑丈さも同時に備えます。
この天板と足のプロポーション(比率)がこのテーブルのデザインのキモのようです。

さらに4本の足は円の外側に向いている側と内側だけが丸く仕上げられてひし形の不思議な断面をしています。
これはやわらかくかつシャープに見せるためでしょうか。または足がぶつかっても痛くないようにか。



さらには普通はあまり気にして見ない部分ですが、裏面です。
よくある単純なバタフライテーブルの支え方でしょうけども、裏側までディテールに気を配ってあります。頑丈なのですが無骨な部材は一つも無く、天板になじむような形をしています。ビス用の穴や兆番の欠き込みまでもが円と直線の組み合わせで単に穴を開けたものではありません。



裏面の美しいおさまり。



というように何気ないテーブルにも密度高くデザインがつまっていることが、所有して日々眺め続けてみてようやくわかりました。良いデザインのものは所有して使い続け眺め続けて、ようやくその良さがわかってきます。
なかなかに奥深いものですね・・・。
愛着の持てるテーブルというのも珍しいのではないでしょうか。
自分でつくる家具や建物にも同様なデザインの密度と愛着を持たせたいものです。



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