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Hacienda San Jose

10年来の夢、メキシコに行ってきました。
建築界の巨匠ルイス・バラガンの住宅を主に見る目的で行ってきたのですが、毎度のことながら現地にはもっとすごいものが無限にありました。ルイス・バラガンは後回しです。

ユカタン半島の中心都市メリダ郊外の"Hacienda San Jose"アシエンダ・サンホセというホテルに宿泊して数日を過ごしてきたのですが、これがすごい。
楽園のような一つの理想の環境がそこにはありました。

普段建築や造園の設計活動をしていると、何のためにどういうものをつくろうとしているのか見失い、単なるデザインの面白さや流行にとらわれたり、機能性に走りがちです。
けれども、本当に実現すべき最高の住環境のクオリティは、静けさ・あたたかさ・鳥や草木などの自然・水・木や石などの本物の素材、また伝統・文化等、非常に「あたりまえの要素」である、ということが改めて実感させられました。

 
 アシエンダ・サンホセは、メリダ近郊の18世紀のアシエンダ(農園の領主の屋敷)をリノベーションしてつくられたいくつかの高級ホテルのうち最も新しいものです。2002年に開業し、様々なラグジュアリーホテルの賞を獲得したそうです。

夜のメリダ市街地から街頭一つ無い真っ暗な道をタクシーでひた走り、どこへ連れて行かれるのやら不安になった頃、現れたのはぼんやりと暗闇に浮かび上がる小さな小屋。ここがどうやらホテルのレセプションらしいです。チェックインを済ませると、キャンドルほどの灯りがあまりにもうす暗く歩くのもおぼつかない園路を抜けて部屋に案内されます。宗教施設かと思うほど神々しいアプローチで、少し怖いくらいです。



広大な敷地には客室とレストラン・教会・ライブラリ・馬小屋・プールなどが点在します。
最も高級なホテルの多くがそうであるように、ここでは何もすることはありません。推奨されるのはハンモックでの昼寝、プールサイドでのんびり、散歩、読書、乗馬、レストランでの食事のみです。


ラグジュアリーホテルといっても、建物は昔ながらのメキシコ民家です。鮮烈な色の漆喰やアンティーク家具・建具でしつらえられており非常に素朴で原始的ですが、全てが本物です。
部屋は天井の高さが5mほどあって、日本の小さな空間に慣れた体には馴染まずしばらくは落ち着きませんが、慣れてくると非常に心地よい部屋の大きさに感じてきます。



全ての部屋には外部ポーチと外風呂がついていて、ハンモックに寝そべったりお湯につかりながら庭園を眺めて過ごすことができます。部屋の裏手にはプールと果樹の庭がセットになっているのですさまじい数の鳥が庭園に集まり、早朝には様々な小鳥たちの美しい鳴き声で目を覚まします。朝はほとんど野鳥園のような趣です。



全てが大きめで、すごいスケール感。



庭園内の入口や要所には必ずブーゲンビリアが植えてあるので、花びらが自然に舞い落ちて道がピンクに飾られます。



このホテルの最大の魅力はレストランにあります。このレストランには、「室内」などはなからありません。
朝日と鳥のさえずりと緑の中での食事のあまりの心地良さは筆舌に尽くしがたいものです。


このような空間は、生活環境をつくる者の"究極の理想"なのではないでしょうか。
様々な緑・花・果樹・鳥・蝶・水・シンプルな建物・本物の自然素材の感触・古い家具・木漏れ日・やわらかなファブリック・伝統・多様な空間体験・ろうそくの灯り・そして手づくりの食事。
自分が漠然と実現しようともがいていた環境は、たいへん洗練されたかたちでここにありました。



しかし一方、このすごさはどうやら写真では伝えきれないようです。鳥のさえずる声や水面の輝き、レストランから眺めた庭のすばらしさ、空間体験の多様さなどは全く写真に表現されていません。非常に残念です。写真技術のつたなさもありますが、ランドスケープはその大きさゆえか写真では表現されにくいのです。
ぜひこの奇跡的に平和な空間を一生に一度は体験してみてください。

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