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若葉台ヒルサイドテラス-6 都市計画のチカラ

ヒルサイドテラス若葉台が位置する稲城市若葉台は、東京都の多摩ニュータウン計画の東端にあたります。

ここ数年この地域のまちづくりに関わり、稲城市から西側は八王子市まで連なる多摩ニュータウン地域の良好なエリアを見ているうちに、"都市計画の力"というものを強く実感するようになりました。

 

通常都市計画というものは、図面等で見て頭で理解できたとしても、一個人が生活体験として実感することは非常に難しいものです。

もし都市計画された地域に住んでいたとしても、その全体像を意識する方はほとんどいないかと思います。

 

東京の街並みのほとんどは、個別の住宅地開発等で形成され、後から公共施設や道路の拡幅等でできた街の場合が多いため、全体を綿密に都市計画された街に住んだことのある方は少ないのではないかと思います。

 

しかし、歩行者に配慮された道路計画や、豊かな緑地や公園・公共施設の配置やデザイン、立橋や擁壁等の土木構造物までデザインされた都市の生活環境は、やはり非常に価値の高いものです。

現在多摩ニュータウン全体としては高齢化等の問題を抱えていると言われていながらも、計画から数十年経った今もやはり非常に良好な住宅地として、その魅力は衰えていないのです。

 

都市計画によって定められているため、永続的でいつか失われるような種類のものではありません。

 

 

ヒルサイドテラス若葉台は稲城市若葉台地域は、多摩ニュータウン計画の東端に位置し、1999年にまち開き後、2006年にかけて整備された、ニュータウン内で最も新しいエリアです。

 

この街では、若葉台駅を降りてから家に着くまでのほとんどの道のりを、公園を歩いて帰ることができます。

車の動線と人の動線が完全に分けられており、さらに計画された公園や元々の雑木林等の緑地が非常に多いため、ほとんど公園内を歩く感覚で家までたどり着くことができるのです。

そして駅から家までの徒歩圏内に、主要な公共施設や公園、生活に必要なスーパーや書店等の商業施設が整備されています。

一方、青少年の生活にふさわしくない施設はほとんど存在しません。

 

 

歩車道が分離されて、歩行者は緑道を歩いて安全に家に着けるというのは、非常にシンプルなことですが、地方都市ならともかく、東京近郊でこのような生活を送れる街はなかなかありません。

 

これは特に小・中学校に通う子供や老人にとっては非常に大きなメリットとなります。

中学校くらいまでの子供たちにとっては、徒歩と自転車で行ける範囲の環境が日常的には彼らの世界のほとんど全てとなるため、街のつくりや、生活圏内にある施設や公園等の生活環境が、ダイレクトに人格や価値観を形成する要因となります。

 

 

 

また、計画された公園や既存の雑木林等の緑地の多さと、緑地や建築物や土木構造物等を含めた景観が美しいことも、若葉台地区の大きな魅力の一つです。

 

緑地では若葉台公園をはじめとして、各種グラウンド、上谷戸緑地、稲城中央公園、多摩カントリークラブ、がけ地の雑木林、各種緑道等、たくさんの緑地に囲まれています。

 

 

 

さらにもっと広域に目を向けると、稲城市周辺では、そもそも多摩川沿いの緑地から、多摩カントリークラブ、向原北緑地、よみうりランド、大小様々な公園と緑地が環状に都市計画により永続的に確保されています。

大規模に緑地が整備された、特に自然環境の豊かなエリアなのです。

 

 

公共建築では、若葉台小学校と稲城第六中学校が、街のシンボルとして整備されています。

イタリアの山岳都市の建物をイメージした、多摩ニュータウン南大沢地域とも関連したデザインで、地域の景観上のシンボルとなっています。

 

 

 

 

周辺の街並みは電柱が地中化され、稲城市景観色彩ガイドライン等でゆるやかにコントロールされていて、美しい街並みを形成しています。

 

 

 

土木構造物も、地域景観のシンボルにもなっている稲城中央公園の"くじら橋"をはじめとして、がけ地の擁壁や道路景観のデザインにまで配慮されています。

 

 

若葉台地区を通る南多摩尾根幹線道路については整備中のため通過交通が多い状況ですが、今後通過交通を減らすためのトンネル迂回路の計画があります。

 

このような街での生活の素晴らしさは、数年間生活して体験してみないとなかなか実感できない種類の感覚です。

 

私は東京都国分寺市の国立駅周辺エリアで生まれ育ち、最近まで国立駅南側のメイン通りである大学通り沿いに住んでいました。

以前このブログでも取り上げたように、国立は東京では珍しい都市計画されて作られた学園都市です。

駅からまっすぐ伸びる大学通りと、隣接する一ツ橋大学が街の中心となっています。

 

 

この大学通り沿いには10数メートル幅の緑地帯に桜と銀杏並木が交互に植えられ、春は桜、夏は緑陰、秋は銀杏、冬はイルミネーションと、四季折々楽しみをもたらしてくれます。

 

 

私は一時期この大学通りから少し入ったところにあるマンションに住んでいたことがあり、毎日この大学通り沿いを歩いて仕事に通っていたのですが、この生活があまりにも素晴らしいものでした。

 

 

大学通りを歩いていると、豊かに植栽された公園の中を歩いているような感覚で、20分近くの徒歩でも苦にならないどころか、毎日その草花や木々の変化を眺めることが、この上無い喜びだったのです。

休みの日には、用事はなくともぶらぶら散歩に出かけていました。

豊かな暮らしとは、このような生活のことを言うのではないかと思っていました。

 

 

地方都市では当たり前の生活かもしれませんが、このような生活をできる場所は東京ではなかなかありません。

 

 

しかも国立駅前は学園都市として計画されたため、商業施設の立地や種類も厳しく制限され、青少年のためにならない施設は皆無の上、書店や文具店や喫茶店等、学生のための施設は非常に充実しています。

 

景観としては、三角屋根の国立駅と、一橋大学の洋風のレンガ校舎が地域の景観イメージのシンボルとなり、良好な街並みを形成しています。

 

この街で生まれ育ったことは、私自身の人格や価値観の形成に非常に大きな影響を与えました。

地元愛のせいもありますが、国立以上の街は、他にはないのではないかと本気で思ってしまうほどです。

建築や造園・まちづくりの仕事に関わらせてもらっている現在では、理想的な生活環境を設計するための基準の一つとなっています。

 

 

一方、多摩ニュータウンの中でも、80年代に開発されたベルコリーヌ南大沢エリアは、特に豊かな生活環境を持ちます。

"豊かな生活"とはどのようなものか、その一例のイメ―ジを与えてくれます。

 

 

ここでも歩車道の分離が徹底されていて、駅前から住宅地の中心部までは、歩行者専用の緑道を通って辿り着くことができます。

緑道沿いには小さな小川まで設けられていて、まるで公園のようです。

 

 

 

 

子供たちは、保育園・小中学校・公園や運動施設、図書館等の公共施設まで車道を通らずにたどり着けます。

またスーパーやコンビニ等の商業施設も歩いて行ける範囲に整備されています。

非常に安全で、どこでも遊び・走り回れるため、子供や高齢者のためには理想的な環境です。

 

 

イタリアの山岳都市をイメージし、マスターアーキテクトを中心とした著名設計事務所の協働で作られた街並みは、豊かな緑と調和して、時代に左右されない普遍的な魅力を醸し出しています。

 

 

日本にもこんな生活環境があったのだな、と改めて驚くような豊かな生活環境が今でも維持されています。

まるでヨーロッパの小都市のような生活環境です。

今見ても全く色あせていません。

 

 

しかし、理想的な環境が形成された一方で、問題点も徐々に生じてきました。

一度に大量の住宅が供給されたために、数十年後に街全体の高齢化が急速に進んだことや、歩道と車道が分離されているため、近年車道沿いに増えた大規模商店へのアクセスに苦労する等の問題点も時代と共に生じてきました。

最近では都心近くのマンション建設がブームになり、都心への通勤時間も問題になっています。

しかし、それらの問題点を考慮してもなお、豊かな生活環境としての魅力は現在でも失われていません。

 

生活する上で何を重視するかは人それぞれ異なるものですが、"豊かな生活環境"がどのようなものか考えた時、現在でも非常に優れた住宅地の一つと言えます。

 

 

世界で最初のニュータウン、イギリスの田園都市レッチワースでは、都心からはるか遠くに離れた自然に囲まれた立地のため、街の中に働く場所や商業地が計画されていて、職住近接の理想的な生活が想定されていました。

現在では住宅地内の仕事場や商店が必ずしもうまく機能しているわけではないのですが、仕事と生活のバランスが、今も昔も理想都市の永遠のテーマなのです。

 

近年の都市計画では、豊かな緑地に包まれる暮らしだけが良いというわけではなく、商業施設や図書館等の人の集まる施設を核として、人々の活動を活発にするような都市計画が様々に試みられています。

 

若葉台エリアでも、多摩ニュータウン初期の問題点を改善するために、完全に歩車分離せずに商業エリアと歩行動線を混ぜ、大規模なオフィスを誘致し、マンションや一戸建て等様々なタイプの住宅をミックスさせるといったような対策を取り入れています。

 

 

このように、都市計画によって作られ、数十年を経た魅力的な街を改めて眺めてみると、そもそも緑地や公共施設の配置や生活動線等、環境を最初に設計した"都市計画"があまりにも重要だったことを強く感じます。

数十年前に設計者によって描かれた豊かな生活のイメージが、みごとに実現しています。

 

そのような街で暮らす価値は、金銭的な価値や数字ではなかなか現れてこないものですが、体験してみるともう離れたくなくなるような深い愛着をもたらします。

 

 

若葉台地域は、多摩ニュータウンの中でも最後に作られたエリアのため、まだまだ若い成長途中の街ですが、数十年後には樹木も大きく育ち、落ち着いた豊かな景観の街が持続的に維持されていくことがイメージできます。

 

ぜひ都市計画によって作られた街の生活を、一度は体験してみてください。

若葉台地区全体の行く末を見守り続けたいと思います。

 

 

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