July 2019  |  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

ヒルサイドテラス若葉台-3 街並みについて

今回は住宅の外観と、それらが集まってできる街並みについてです。

外観の大まかな形は、非常にシンプルな家型をイメージしました。

形はシンプルにして、塗り壁や板張りの自然の素材感を強調し、周囲の雑木林や庭の緑の背景となるような住宅の姿を意図しました。

 

こちらは提案時の鳥瞰図です。(注:完成時とは異なる部分があります)

 

 

外観の特徴としては以下の要素が挙げられます。

・シンプルな三角屋根

・長い庇

・一棟一棟異なる色彩

・一棟一棟異なる間取りと形

・道路側に突き出た出窓

・木々に見え隠れする家並み

・植物の緑色が映える外壁色と質感

・門型に囲われた玄関

・玄関周りの木材の外壁

・南側と広場に対して大きな窓

 

 

前にも述べたように理想の住宅地はイギリスの田園都市だとは言え、ここは日本なので、日本の風土にイギリスの住まいを持ってくることが適しているとは全く思えません。

日本には日本の風土に適した住まいと街並みの姿がふさわしいと考えました。

家の形は、もともと立地する風土・文化に密接に関係しているため、切り離して他に移せるようなものではないのです。

 

 

長い庇は、日本建築最大の特徴です。

日本の寺院建築等では、雲肘木と呼ばれる、木材を積み重ねた部材で長い庇を張り出し、木造の柱や土壁を守っています。

反対に西洋建築の場合は、石造のため、また雨がそれほど多くないために、庇は非常に短い場合がほとんです。

庇の有無は、日常的な使い勝手ばかりでなく、外壁の耐久性や汚れの付きやすさにも大きく影響します。

 

このように、庇は日本の風土に根差した形で、雨から外壁を守り、夏場の日射を遮り、冬場は日差しを取り込む必要性から出てきた形です。

近年の分譲住宅からは、この庇がほとんどなくなっている点も個人的には不満に感じている点でした。

分譲住宅のほとんどが洋風のイメージであることも、庇が短くなる原因となっています。

庇が長いと洋風の建物らしく見えにくいのです。

 

 

これまで日本の住宅作家が追求し続けてきたのは、日本の風土と伝統文化に根差した形を現代的なデザインとニーズに基づいた形で実現することでした。

日本の風土と文化に根差した、日本のモダンデザインを、分譲住宅のデザインにも生かすことを目指しました。

 

ヒルサイドテラス若葉台は、分譲住宅としては非常にシンプルで地味とも思えるほどかもしれませんが、形はシンプルで自然素材の素材感を強調することで、植物の緑色が非常に映える背景となります。

周囲の雑木林を背景に、シンプルな家型の色彩が目立ち、庭の植物に遮られながら見え隠れして初めて、全体の景観が調和する家の外観のデザインとなっています。

 

 

 

一方、世界の街並みを見ていると、どのような姿が豊かな街並みなのかを考えるための参考になります。

近年のまちづくりでは、活気ある街並みをどのようにつくるのか、ということが世界共通のテーマの一つになっています。

 

近年話題になった、オランダの建築家MVRDVの住宅地のデザインでは、同じような極限までシンプルな三角屋根の家が並びますが、外壁の素材とビビッドな色彩がそれぞれ異なり、非常に活発な印象のおもしろい住宅地となっています。

 

 

また、下の写真のアムステルダムのボルネオ島という住宅地では、全て同じようなサイズのタウンハウスが連なっているのですが、全て異なる素材とデザインがなされていて、統一感とバラバラ感を併せ持ちます。

ここではデザインはバラバラですが、外壁の素材は主にレンガで、色の違うものが用いられています。

 

 

これらの面白い住宅地のデザインは、なんと日本やアジア地域のめちゃめちゃな街並みからインスピレーションを受けて、わざとバラバラなデザインや色彩で街を計画したということです。

近年、世界中でこのような従来にないバラバラなデザインながらも統一感のある街並みというのが様々に試みられています。

以前は統一感のある伝統的な街並みだけが良い街並みと世界中でみなされていたのですが、近年ではバラバラで統一感のない街並みのほうが、活動的でおもしろい街並みだという価値観になりつつあるのです。

このような、一見バラバラですが統一感のある街並みというものを、日本でも実現したいと考えていました。

 

 

また、以前訪れたことのあるメキシコの街並みは、家の一棟一棟に異なる強烈な色が塗られていて、街全体が絵の具のパレットのように非常にカラフルで、何か生き生きと元気が出てきてしまうような色彩をしていました。

色だけではなく、壁のしっくいや扉の木材の素材感も非常に荒々しく、日本の小ぎれいな街並みと異なり、何かダイレクトに感性に訴えかけてくるような街並みでした。

 

 

世界遺産にもなったメキシコの国民的建築家ルイス・バラガンの住宅群と共に、非常にその色彩の持つ活力が印象的で、これも日本の街並みに生かすことはできなものかと常々考えていました。

 

 

メキシコと同じような強烈な色彩では日本の街並みには合わないかと思うのですが、この楽しげなカラフル感と素材感は、日本でも応用できるのではないかと考えていました。

 

後から思えば、これらの面白い街並みの印象が頭の中に残っていて、今回の街並みの提案につながりました。

 

ヒルサイドテラス若葉台では、ホワイト・ウォームグレー・ライトイエロー・ライトベージュといった日本らしい色彩を用いて、各棟をそれぞれ異なる色のざらざらとした塗り壁として、落ち着いた色彩ながらも色とりどりで活発なイメージの街並みを考えました。

全て植物の緑が映える色彩と素材感でもあります。

 

 

それぞれの家は、色も形も異なるため、自分の家と認識しやすくなる効果もあります。

色はそれぞれ異なるのですが、玄関周りや庇の下の部分は同じ木材がアクセントとして用いてあり、街並みに統一感ももたらしています。

 

 

時が経って木々が育ち家の姿が隠れるほどになった頃、初めて自然と人工の調和が取れ、この住宅地の本当の良さが見えてくるかと思います。

時が経つほどに価値を増してゆく住宅地を目指しました。

まちの姿を見守ってゆきたいと思います。

 

pagetop