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三千院

"京都大原三千院の紅葉"

今年ももうすぐ紅葉の季節です。
造園家のはしくれとしましては、春と同じくらいに見所の多い楽しみな季節です。

日本には紅葉の名所はたくさんありますが、JRの広告や雑誌などで秋になると毎年のように登場するのでずっと気になっていた京都大原の"三千院"の紅葉。
昨年ようやく訪れる機会がありました。

モミジの紅葉だけが美しい場所、建物が素晴らしい場所、美しい自然環境、それぞれ単独では美しい場所は他にもたくさんあります。
しかし三千院では、「建築」と「庭園」と周囲の「自然」が一体となって、他のどこにもない強烈な"美しさ"をつくり上げています。



 
 三千院は、山すその斜面を利用した広大な敷地に御堂と庭園がひな段状に散在しています。
院内を回遊するにつれ様々な庭園や御堂・仏像・草木などの見所が次々に現れます。



まず大きな山門から前庭を経て入り口から中に入ると、まずは4畳ほどの小さな坪庭。
シダと竹のシンプルな坪庭なので派手さは無いのですが、薄暗い空間に浮かび上がる坪庭は何かしら凄みがあり、この後の展開を予感させるプロローグのように作用します。



大きな客殿に入ると大きく広がる庭が"聚碧園"。斜面を利用して目の前に緑の斜面が北面と東面に広がる立体的な庭です。建物のすぐ脇を清らかな池が囲むため、紅葉を映しこんで輝きます。
庭の周りを回廊が囲むので様々な角度から眺めることになります。



さて、さらに回廊をめぐって奥へ行くと、三千院最大のハイライト"有清園"です。
真っ暗な堂内から奥深く庭を見通すと、柱と杉木立が一体となって黒い柱の空間をつくり、コケのモスグリーンの広がりとシャクナゲの濃い緑を背景にして、木立越しに"往生極楽院"と鮮烈なモミジが広がります。



"往生極楽院"の内部には国宝・阿弥陀三尊像が鎮座しています。狭い堂内いっぱいに大きな仏像が収まっているせいか、実際の大きさ以上に大きく見え、どっしりとした神々しい存在感が強烈な仏像です。
さらに御堂の脇には清らかで静かな水辺がひっそりとたたずみ、遠くから水の落ちる音が聞こえてきます。
建物・仏像・庭園・自然環境の全てがあまりに神々しく、まさに極楽浄土もしくはその入口をイメージして作られた環境ではなかろうかと感じられます。



そして、さらに奥まで敷地を巡り、帰ろうと斜面を降りて山門をくぐった瞬間に最大の見所が現れます。
杉木立と山門の向こうのモミジが夕日をバックライトに鮮烈な色に輝き、最も美しい"赤"を最後の最後に見せ付けられることになります。
杉木立と門によってつくられた黒い額縁の間に広がるモジミの紅葉がこれほど美しいとは・・・。
日本に生まれて良かったと思う瞬間です。



夕日をバックにモミジを見せるのは、古来日本庭園で仕組まれているお決まりの手法なのですが、これほど印象的な光景にはなかなかお目にかかれません。
写真などでは鮮烈な色や印象的な空間体験の連続が全く表現しきれないのが残念です。



入口の山門をくぐるところから最後のモミジまで、建物・庭園・自然環境を用いた完璧な空間体験のシナリオです。

建物の中をめぐると様々な庭が現れ、庭園を歩いて草木や水を間近に眺め、また御堂に入り回遊しながら異なる景色や仏像を眺める、外と中の区別が希薄な"回遊式の環境"。
ここでは建物は単体で眺めるものではなく、草木や仏像と共に庭の点景のように扱われています。

モミジの紅葉だけが美しい場所、建物が素晴らしい場所、美しい自然環境、それぞれ単独では美しい場所は他にもたくさんあります。
しかし三千院では、「建築」と「庭園」と周囲の「自然」が一体となって、他のどこにもない強烈な"美しさ"をつくり上げています。

しかしあまりの人の多さにもまた驚いたのでした・・・。

http://www.sanzenin.or.jp/
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