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ユハ・レイヴィスカのミュールマキ教会

学生時代からずっと訪れてみたかった建築が、フィンランド・ヘルシンキにあります。

ユハ・レイヴィスカのミュールマキ教会、1980年代の作品で多くの建築誌やデザイン誌でも取り上げられている、時代を超えた名作です。

 

ヘルシンキから電車で20分ほどの街ヴァンターのロウヘラ駅を降りると、駅前ロータリーからすぐにレンガの建物が目に入ります。


 

ロータリーに面した南面は、ベージュ色のレンガと真っ白な塗装の壁が折り重なる穏やかな外観ですが、

壁から天井に及ぶ斜めのトップライトが目を引きます。

たくさんの壁が縦横に重層して構成された空間です。


 

東側に回り込むと、エントランスが現れます。

 


 

東側の立面は非常にシンプルなスリットの連続した白い壁面です。


 

内部に入ると、イメージががらりと変わり、真っ白な渓谷のような大空間が広がります。

壁から天井にわたって大きなトップライトが巡り、あちこちの壁の隙間からも光が入るようになっています。

小さく分割された壁・天井・梁と、大きなパイプオルガンがランダムなデザインで配置されて、

リズミカルな空間となっています。

 

音楽の楽譜を建築にしたような、楽しいデザイン。

ユハ・レイヴィスカはピアニストでもあったそうで、建築と音楽は非常に近いものだと言っています。


 

折り重なった壁の一角に、ファブリック製の十字架がかけられた、控えめな祭壇が設けられています。

 

ここには通常の教会にはあるはずの強く求心的な中心のようなものが無く、

あちこちから光の差し込む自然の真っ白い渓谷の一角のへこみに祭壇を設けたようなイメージで、

何か人工物を超えた崇高な雰囲気を感じます。



 

ずっと訪れてみたかったので、長年写真でこの建物を見てきました。

作品集では真っ白な空間に明るい光の写真が多かったのですが、

実際に体験してみるとだいぶ写真のイメージとは異なりました。

写真から感じるよりもかなり大きな空間で、思ったよりも暗いのです。

暗い影の空間に、壁の隙間から光が差し込んでくる印象が強く残りました。

訪れた季節や天気にもよるかもしれません。

 

ユハ・レイヴィスカの空間は、写真で見るものとは全く異なり、より多様な光を強く感じます。

その光は、現実には雲や太陽が動いていくため、光も動き、空間が変化し続けます。


 

3次元にリズミカルに配置された照明は、空からたくさんの天使が光と共に降りてくるかのように感じられます。

光が浮遊しています。


 

壁の間から漏れる光が十字架のタペストリーを照らします。

祭壇の周りには壁と壁の間の細いスリット窓から、ぼんやりとしたやわらかい光が差し込みます。

場所によって差し込む光の質が全く異なります。

やわらかなタペストリーと間接光で、非常にやさしいイメージの祭壇となっています。


 

大きなトップライトからは雲の切れ間から差し込む天使の梯子のような光が。

 

 

直射日光が壁に反射して、内部全体を明るくする強い光です。

 

 

空間の大きさと光の強さが対応しているようです。




祭壇の背後には、外部の白樺の林と対応したような縦長のたくさんのスリット窓が。

東側のため、午前中早い時間には木漏れ日のような光が差し込みます。

 

天井から吊られたたくさんの照明とスリットの配置が、まさに音楽を奏でるようなリズミカルなデザインです。

空間はもちろん静止しているのですが、「光の奏でる、空間の音楽」のようなものを感じます。

 

雪の世界の、神々の空間。

 

ローマのサンピエトロ大聖堂で感じる、人智を超える崇高な神々しさと同様な崇高さを、この小さくシンプルな教会からも感じます。

 

ユハ・レイヴィスカはこの教会を「陽光」と名付けたそうですが、その名のとおり様々な光のかたちが建築のテーマとなっています。

 

・上部からくる木漏れ日のような光

・壁の間から漏れてくる光

・水盤に反射する光

・ファブリックを透過する光

・リズミカルに配置された照明の、浮遊する光

 

場所によって異なる光をデザインしています。

 

 

また、ここでは光だけでなく影を深く感じます。

光の向きや明るさによっては、薄暗い教会の中にわずかに光が差すようになったり、

十字架の部分だけが明るく照らされたりします。

 

パキラ教会と同様に、言葉にできる要素はあまりありません。

ただただ建築と光のたわむれを感じる場所です。

 

光の変化があまりにも美しく、ただ光を眺め、感じているだけで、一日が過ぎてしまいそうです。

 

 

トップライトからの光が洗礼用の水盤を照らします。

 

 

外に出ると現実の世界に戻ります。

周囲に植えられた白樺の林が美しく輝いています。

 

すごい教会でした・・・。

 

 

また異なる季節、異なる時間に訪れてみたいものです。

 

建築好きばかりでなく、デザイン好きな方ならどなたでも訪れる価値のある場所です。

ヘルシンキで時間があれば、ぜひ一度訪れてみてください。

 

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