July 2019  |  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

国立新美術館

今回は軽いエントリで、東京で好きな場所を取り上げたいと思います。
まずは話題の六本木エリア、国立新美術館です。
設計は黒川紀章・日本設計共同体。

ここには素直に"気持ちの良い"空間があります。
そのためか常に自然に人が集まり、のんびりと時間を過ごしています。
何でも無いことのようですが、気持ちの良い都市空間というのは、特に日本では滅多にあるものではありません。
しかし建築業界では・・・?
この"居心地の良さ"を作っているのは、

・まずはウッドデッキ状の床。
・大きなガラス面と、そのむこうに広がる青山霊園の緑。
・木漏れ日のような明るい光。
・自由に使える椅子とテーブル、特に公共空間では珍しいウェグナーのリラックスチェア
・高いところからも見下ろせる。
・様々な休む場所が用意されている
・美術館を出てすぐに休める、待ち合わせにも便利
・地下鉄からミッドタウンへの動線の一部になっていて人が集まりやすい

ということなどですが、動線・空間・賑わいなど公園や広場空間の成功条件がしっかりと整えられていて、なるほど人が集まるべくして集まっているな、という場所です。
ただでかい空間、ただガラスであればこのように快適な場所になるわけではありません。光、素材、人の流れなど、全てが"ちょうど良い具合"になっています。
"建築"というよりも優れた"広場"の事例に近いようです。



一方、おそらく建築家や専門家の多くからの建築作品としての評価は、コーンが・・・、ディテールが・・・、美術館としての新しさが・・・・、など、あまりよろしくない評価が想像されます。
やはりこれだけ話題になっているにもかかわらず建築学会賞も取っていない・・・。

個人的にも"建築"作品としてみると、やはりとても気持ちの悪い形。
うねるガラスのファサードは流行気味の形で、ごたごたといろんなものがついてあまり美しくないし、とんがりコーンも黒川作品に多用されていますが単純でわかりやすすぎてちょっと・・・。
全体としても美術館の箱にガラスのアトリウムをくっつけただけという単純で取ってつけたような不自然さ・・・。
しかし建築作品としてではなく、"都市空間"、"場所"、"ランドスケープ"といった観点から眺め直してみると、なかなか優れた場所であるな・・・と思い直すのです。
珍しい不思議な魅力を持つ建物です。


しかしこれまた一方、ここは美術業界(学芸員・主催者側)からは非常に評判がよろしいそうです。
"あらゆる意味で機能性を重視している"と黒川紀章氏も述べているように、搬出入のしやすさ、展示の自由度、休憩スペースなど、美術館としての使いやすさを追求した成果のようです。
常設展示を持たないことから、正確には美術館ではなくアートセンターだという指摘もありますが、使う側からの評判はすこぶる良いそうです。

展覧会を見に行く立場から見ても、なかなか良い場所です。
そもそも美術館は意識を集中して数時間も歩き続けるので、毎度ものすごく疲れます。
ここは広く気持ちの良い休憩スペースと飲食が用意されていて、出てきた後快適にすごせます。
これは当然のようですが、これまでの都市部の美術館・博物館にはなかなか無かった要素です。
 


世界中で壁がうねって傾いて透明でびっくりの有名建築家によるド派手な美術館が続々と建設され続ける今日このごろですが、ではいったい"良い美術館"とはどういうものかと考えると、この国立新美術館は建築界の潮流とは正反対なのですが、その答えの一つではあるようです。

東京には都心部でも郊外でも、街の中で"穏やかに憩える場所"はなかなかありません。とにかく疲れる街です。公園にその役割は託されているのでしょうけども、人が集まる街中に公園などそもそも滅多にありません。
日本の街並みが貧困なのはなかな改善できなくても、穏やかな気持ちで自由にすごせる空間を都市の中にもっとつくる必要があります。

"居心地の良い場所"が街の中に増てゆくと、もっともっと未来の日本の都市空間は良くなるでしょう。

参考
http://www.nact.jp/building_intro.html


 

comments

今年卒業して資格試験を受ける者です。利用者には評判いいのですね。気になっていた建物です。黒川氏は最後のパフォーマンスも建築家たちからそっぽを向かれていましたが、私は何となく気になる建築家でした。建築家から評価されない建築が大繁盛。小気味いいじゃないですか。

  • chaar
  • 2009/04/17 10:25 PM
   

trackback

pagetop